社会の高齢化に伴い認知症の患者数は増加してきている。認知症の代表的な疾患であるアルツハイマー(AD)の研究は進んでいるが、未だその発症機構・進行機序の詳細は明らかになっておらず、対処療法薬しかなく、根本的な治療法がないのが現状である。近年、ADの発症はアミロイドβ(Aβ)の沈着(老人斑)によるものではなく、その前段階であるAβの小さな集合体(オリゴマー)によるという考えが主流になってきている。所属研究室で開発中のAβワクチンはAβオリゴマーを含む様々な複合体を発現するため、このワクチンにより産生される抗体にはAβオリゴマーを認識する抗体が含まれている可能性が高い。 昨年度(24年度)の研究において健常個体に対するワクチン投与により抗Abオリゴマー抗体の産生が増強されていると示唆されるデータを得ることができた。本年度(25年度)はアルツハイマーモデルマウスを用いてワクチンにより抗Aβオリゴマー抗体が増加しているか、その脳の抽出蛋白質にAβオリゴマーが削減されているかを調べた。また、ワクチンの投与時期の検討も行った。その結果、アルツハイマーを発症する前のマウスにワクチンを投与することで、その脳抽出蛋白質のAβオリゴマーの減少が確認された。このことから開発中のワクチンはヒトでもAβオリゴマーを削減する可能性が示唆された。
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