研究目的は環境が及ぼす肥満の維持増悪のメカニズムの解明である。 方法はマウスへ環境エンリッチメントを加えて、体重、肝臓と脂肪組織の重量、血糖値などの個体レベルでの代謝関連のパラメータや日内行動リズムを調べ、さらに脳の日内遺伝子発現リズム、レベルを解析することである。マウスは肥満糖尿病になりやすいC57BL/6マウスを用いた。飼育環境への介入手段である環境エンリッチメントとは、広いケージ、噛ることのできる木材(数種類)、巣を作るためのシート、穴のあいたプラスチック製のドームやなどを用い、マウスへ感覚的、認知的な刺激を与えることである。環境エンリッチメントの期間や種類により様々な報告があり、本研究においても、それらが代謝に与える影響を考え解析するのに適した条件を検討した。 我々が作成した環境エンリッチメントでの代謝状態をやせ型のマウスで解析したところ、環境エンリッチメント群では、対照群と比較して体重や脂肪重量が有意に低い傾向にあった。 平成25年度の研究においては、高脂肪食負荷により肥満させたマウスにおいても、同様に体重や脂肪重量が低い結果が得られた。すでに肥満が形成された状態でも環境エンリッチメントの効果が得られたことは、新たな発見である。 さらに、行動学的には環境エンリッチメントの介入により、夜行性のマウスの暗期での活動量が多い傾向にあるデータが得られた。今後は更に解析を進めて、個体の日内リズムの変動や代謝と脳内の遺伝子リズムについて検討を行い、学術雑誌への投稿を目指す予定である。
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