研究課題/領域番号 |
24790906
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
登丸 琢也 群馬大学, 医学部, その他 (70594399)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | PDIP1 / 脂肪細胞 / 転写共役因子 / PPARg |
研究概要 |
1 PDIP1が脂肪細胞分化に及ぼす影響 マウスPDIP1に特異的なsiRNAとコントロールsiRNAを2種類づつ作製し、エレクトロポレーション法にて3T3-L1前駆脂肪細胞に導入した。2日後にRNAを抽出し、定量的PCR法にてPDIP1をノックダウンした3T3-L1前駆脂肪細胞ではコントロールに比べPDIP1 mRNAが約50~60%ノックダウンされていることを確認した。次にPDIP1をノックダウンした3T3-L1前駆脂肪細胞を標準的な方法により脂肪細胞への分化誘導を行った。分化誘導6日後にoil red O染色を行ったところ、PDIP1をノックダウンした細胞ではコントロールに比べ中性脂肪の蓄積量が有意に低下していることが判明した。また定量的PCRでもFabp4、Adipoq、Retnなどの脂肪細胞特異的な遺伝子の発現がPDIP1をノックダウンした細胞ではコントロールに比べてそれぞれ約40~50%、30~40%、25~50%低下していた。またPpargの発現もPDIP1をノックダウンした細胞ではコントロールに比べて約20~50%低下していた。以上の結果から、PDIP1は脂肪細胞分化を促進的に制御する可能性が示唆された。 2 脂肪細胞においてPDIP1で制御される遺伝子群の網羅的同定 雄の野生型マウス及びPDIP1欠失マウスに標準餌または高脂肪食を負荷した(それぞれの群につきn=5)。20週齢でマウスを安楽死させた後、精巣上体周囲の白色脂肪組織からRNAを抽出した。それぞれの群のRNAを混合した後にDNAマイクロアレイ解析を行った。2倍以上または1/2以下の遺伝子発現の差異をカットオフ値と設定すると、標準餌ではPDIP1で制御される可能性のある遺伝子が1362個抽出された。高脂肪食負荷の条件では同遺伝子が1626個抽出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1 PDIP1が脂肪細胞分化に及ぼす影響 RNAiを用いた検討からPDIP1が脂肪細胞分化を促進する分子であることが判明した。脂肪細胞分化初期に誘導される転写因子群(Cebpb, Cebpd, Egr2、Klf5など)についても今後さらに検討が必要と考える。 2 脂肪細胞においてPDIP1で制御される遺伝子群の網羅的同定 PDIP1遺伝子欠失マウスとDNAマイクロアレイを用いた検討によって、通常餌では1362個、高脂肪食負荷では1626個の遺伝子がPDIP1により制御されている可能性があることが判明した。今後、PDIP1により制御される遺伝子群の機能をGene Ontology解析やPathway解析などの統計学的な手法を用いて更に解析を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1 PDIP1が脂肪細胞分化に及ぼす影響:同様の実験系で脂肪細胞分化初期に誘導される転写因子群(Cebpb, Cebpd, Egr2、Klf5など)についても検討を行う予定である。 2 脂肪細胞においてPDIP1で制御される遺伝子群の網羅的同定:同定された遺伝子群の機能についてGene Ontology解析やPathway解析などの統計学的な手法を用いて更に解析を行う予定である。 3 脂肪細胞におけるPDIP1結合部位の網羅的同定:3T3-L1脂肪細胞からクロマチンを抽出し、PDIP1特異的な抗体を用いて免疫沈降を行う。免疫沈降法で得られたクロマチンに脱クロスリンク処理を行いDNAを精製し、次世代シークエンサーを用いてPDIP1結合部位配列の解析を行う。さらにSTARなどのコンピュータープログラムを用いた解析により全遺伝子上のPDIP1結合の配列を得る。次に無作為に抽出したPDIP1結合部位に対してPDIP1が実際に結合するかChIP-qPCR法にて確認する。得られた結合部位に一番近い遺伝子を抽出し、Gene Ontology解析を行うことによりPDIP1標的遺伝子群の機能を推定する。また前述のDNAマイクロアレイの実験結果とも比較・検討する。更に得られた配列をAsap等のコンピュータープログラムで解析し、PDIP1結合部位に共通の転写因子結合配列を抽出し、PPARg結合配列や他の核内受容体や転写因子の結合配列があるか検討する。更に得られたデータをPPARgや種々のクロマチン修飾のデータベースと比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
収支状況報告書(様式F-6-1)の次年度使用額に前年度未使用額の約24万円が表示されている。これは主に平成24年度に学会参加や打ち合わせのための旅費として約20万円を使用する計画であったが、大学から旅費の臨時補助があったため本助成金からの旅費の支出が約4万円で済んだためである。前年度未使用額の約24万円は平成25年度使用予定の物品費140万円と合わせて細胞培養関連試薬、抗体、クロマチン免疫沈降法関連試薬、PCR関連試薬、次世代シークエンサー解析費等の物品費に使用する計画である。また学会参加や打ち合わせのための旅費には平成25年度は予定通り約20万円を使用予定である。
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