研究概要 |
ラット肝腫瘍細胞株(Fao細胞)に、マクロファージ培養細胞株RAW264.7細胞のCMを作用させたときに、惹起させられる脂肪蓄積には、Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ(PPARγ)と、その標的遺伝子の発現上昇が伴っていることを見出した。 In vivoにおいても検討したところ、長期間高脂肪食を負荷した野生型マウスの肝臓において、PPARγとその標的遺伝子の遺伝子の発現が著明に上昇していることが明らかになった。また同時に肝臓マクロファージが著明に増加することを見出した。今まで肝臓におけるPPARγの上昇の意義は殆ど明らかにされていないが、これらin vitroおよびin vivoのデータから、脂肪肝の病態形成にPPARγが重要な役割を担っている可能性が示唆された。 そこでこのマクロファージ由来物質(MDSIF)がPPARγリガンド活性をもつかどうかを検討した。マクロファージ培養上清に、PPARγリガンド活性をもつ物質が含まれるかどうかを、培養肝細胞を用いて、レポーターアッセイにより解析した。また、in vivoにおける既知の内因性PPARγリガンドとして、15-Deoxy-12, 14-Prostaglandin J2 (15d-PGJ2)が知られていることから、マクロファージCM中または肝細胞lysate中に15d-PGJ2が増加していないかを、現在検討中である。 また、物理生化学的検討による、分子カテゴリー(MDSIFが脂質なのか蛋白なのかアミノ酸・糖などの小分子か等)の絞り込みも現在進行中である。 計画年度内にMS解析の実施には至らなかったが、今後従来の計画の如く、MS解析に進む予定である。 以上、研究成果として、MDSIFの本体を明らかにするための、Mass spectrometry(MS)解析の前段階程度まで達成することができた。加えてそのin vitroの研究成果を、意義付けるためのin vivoにおける今後の研究の方向性を見出したことも大きな成果と考えられた。
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