研究課題/領域番号 |
24790914
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高瀬 暁 東京大学, 医学部附属病院, その他 (80508094)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高中性脂肪血症 / アポリポ蛋白C-II / リポ蛋白リパーゼ / SNP |
研究概要 |
アポリポ蛋白C-II(apoC-II、APOC2)はLPLの補因子であり、欠損により著明な高中性脂肪血症(高TG血症)を招く。我々は血清apoC-II蛋白濃度が極度に低下(0.6mg/dl)した高TG血症の症例を以前に報告した。apoC-II蛋白翻訳領域に遺伝子変異は認められず、二次元電気泳動法によりapoC-II蛋白構造が正常である事が示唆された。末梢血単球由来マクロファージにおいてAPOC2 mRNAの50%減少が示された一方、gene clusterを形成するAPOEとAPOC4、およびAPOC2の3'側に位置するCLPTM1のmRNAは健常者と同等であった。 APOC2の5'側に位置するAPOC4の3'端から、3'側に位置するCLPTM1の5'端までをcloningし、Luciferaseを導入したAPOC2 minigene constructを作成し、HEK293、HepG2にてtransfection assayを施行したところ、患者constructのreporter活性は健常者と比してそれぞれ39%、51%減少していた。プロモーター領域を含む全APOC2遺伝子領域のシークエンスを施行したところ、同定されたSNPは全てcommon variantであった(allele頻度>35%;健常者集団(384人)での検討を含む)。 他の高TG血症原因遺伝子(LPL、GPIHBP1、LMF1、APOA5、APOC3)のシークエンスではrare variantは認められなかった。 APOC2遺伝子領域に認められたcommon SNP(s)はrareなAPOC2欠損症(100万人に1人以下)の原因とは考え難い。 APOC2 mRNA/蛋白レベルを調節する未知の遺伝子変異の存在が強く示唆され、whole genome sequenceを用いた解析を施行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
cloningしたapoC-II minigene領域内の患者SNPsのうち、dbSNP(SNPのdata base)に報告されていないSNPが7箇所認められた。常者集団の保存血を用いてgenotypingを施行したところ、これら患者SNPにはrare variantは認められなかった。 common SNPsは患者macrophageのapoC-II mRNAの50%、および患者apoC-II mini gene constructにおけるレポーター活性の減少を説明し得る。 一方、これらcommon SNPsのみでは、著明に減少した血清アポC-II蛋白濃度を説明するには不十分である。 cloning領域外のgenome DNA上に患者のapoC-II蛋白濃度を減少させるvariantが存在する可能性が示唆され、未知のapoC-II特異的enhancerや転写因子(transcriptional regulation)、またはpost transcriptional regulationを司る遺伝子に原因となるvariantが存在する可能性が考えられた。 これらを探求すべく、現在whole genome sequenceによる解析を施行中である。
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今後の研究の推進方策 |
上述の様に、次世代シークエンサーを用いてwhole genome sequenceを施行し、網羅的にrare variantの探索を行う。 検出されたrare variantに対し、data baseと照合し、予想される機能を検討しながら候補を更に絞り込んでいく。 絞り込まれた候補variantについて周辺領域ごとcloningし、plasmid vectorに導入し、in vitro、in vivoでの分子生物学的解析を施行することで機能評価yを行い、variantと病気との因果関係を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の通り、whole genome sequenceを施行予定であり、ここに研究費が最も費やされる事となる。 候補variantが絞られた後は、cloning vectorの作成、培養細胞系を用いたin vitro、更にin vivo環境下でのfanctional assay を施行予定であり、各種消耗品、試薬類、培養メディウム、摂餌代などに研究費が費やされる予定である。
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