研究課題
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は内蔵脂肪蓄積を基盤とするメタボリックシンドロームの肝臓における表現型と考えられ、その病態形成において脂肪組織は多面的な影響を有すると考えられる。申請者らは既に、メラノコルチン4型受容体欠損マウス(MC4R-KOマウス)を用いて、肥満の表現型を有する新規NASHモデルを確立し、肝病変形成に先立って、脂肪組織における炎症・線維化が認められることを明らかにした。肥満の脂肪組織では細胞死に陥った脂肪細胞をマクロファージが取り囲むCrown-like structure (CLS)が認められることが知られているが、NASHを発症したMC4R-KOマウスの肝臓にもCLSに類似した組織像が多数認められた(hepatic CLS: CLS)。連続切片を用いた免疫染色では、hCLSの近傍にαSMA陽性筋線維芽細胞やコラーゲン沈着が認められた。クロドロネートリポソーム法によりマクロファージを消去すると、単純性脂肪肝を呈する野生型マウスではマクロファージが効率的に消失し、炎症・線維化マーカーの発現が低下した。一方、NASHを発症したMC4R欠損マウスではhCLS特異的にマクロファージが残存し、炎症・線維化マーカーの発現には変化がなかった。ヒトNAFLD/NASHにおいてもhCLSを認め、ウイルス性肝炎ではほとんど認められなかった。また、hCLS数は肝細胞障害の指標である肝細胞風船様変性のスコアと正の相関が認められた。以上から、hCLSが炎症・線維化の中心として単純性脂肪肝から肝線維化への進展に重要な役割を果たすと考えられた。肥満脂肪組織とNASHの肝臓において、脂肪の過剰蓄積によって実質細胞(脂肪細胞や肝細胞)に障害が加わり、マクロファージとの相互作用から臓器機能障害に至る共通の分子基盤が存在する可能性が示唆された。
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PLoS One
巻: 8 ページ: e82163
10.1371/journal.pone.0082163
http://www.tmd.ac.jp/grad/cme/index.html
http://www.tmd.ac.jp/archive-tmdu/kouhou/20131212.pdf