研究課題
H25年度はミトコンドリアに局在するタンパク質をコードした遺伝子をノックダウンするライブラリーを作製した。当初は、合成RNAを購入したsiRNAライブラリーを構築する予定であったが、認可された予算の関係からプラスミドベクターによるmiRNAを発現させるプラスミドライブラリーを構築する事に方向を転換させた。145種類の遺伝子に対してそれぞれ2種類ずつの標的配列を決定して、合計290種類のmiRNA発現ベクターを構築した。これを基に、HeLa細胞へトランスフェクションによる遺伝子導入で一過的にmiRNAを発現させてた上で、BlasticidinSという抗生物質による薬剤選択を行った細胞に対してMASCアッセイによるATP合成活性の変化を測定した。その結果、6種類の遺伝子について発現をノックダウンした時に有意なATP合成活性の変化 (上昇2種類、減少4種類)が認められた。再現性を得るため、miRNAを安定的に発現する細胞株を作製して、再度、MASCアッセイによるATP合成活性を測定したところ、4種類について再現性が確認された。その内、1種類の遺伝子ノックダウン株ではATP合成酵素自体の量が減少しており、残り3種類の遺伝子ノックダウン株ではATP合成酵素量には変化が認められなかった。今後は、これら遺伝子のエネルギー代謝における役割を分子生物学的・細胞生物学的側面から研究して、新規ミトコンドリア局在遺伝子の機能同定を行っていくことが重要である。
2: おおむね順調に進展している
今回、人工合成によるsiRNAの作製からプラスミドDNAベースのノックダウンライブラリー作製へと大きく方向転換した事から、当初研究計画書に記載した新規ミトコンドリア局在遺伝子の機能の機能同定までしっかりと行う事ができなかった。しかし、計画の中心的な目的である機能未知であるミトコンドリア局在遺伝子の中からATP合成に関連する因子のスクリーニングを行うことに関して言えば、おおむね達成したと言える。4種類の新規遺伝子は、1つがATP合成酵素量事態に変化を与え、その他は変化しないという状況は明らかとなっているが、さらに4種類の因子がどのようにエネルギー代謝に関わっているのかについてはまったく手つかずの状態である。このことから、達成度は80%ていどと考えている。
今後は、4種類の遺伝子の機能的な解析を進めていく必要がある。しかし、4種類の遺伝子は全て、ミトコンドリア局在遺伝子データベースの中から、機能未知である因子を選択しているので、多面的なアプローチで解析する必要がある。例えば、ATP合成酵素量を低下させる新規因子は約300アミノ酸からなるタンパク質であり、N末端から10%はミトコンドリア局在シグナルであるとみられるが、残り90%の領域は細かく領域を区分してもホモロジー検索を行っても相同性のあるドメインは見つかっていない。このことからも、この遺伝子の発現変化を様々なエネルギー環境下で解析したり、あるいはATP合成酵素のアセンブリーやミトコンドリア自体の生合成といった側面からも解析する事で、機能未知なこれらの因子について何らかの手がかりを得ていきたいと考える。
本課題においてライブラリー構築に時間がかかったため、スクリーニングにより抽出した標的遺伝子に対する解析が不 十分であり、引き続き機能解析に時間的猶予を与えて頂きたく、補助事業期間の延長を希望します。。当初の研究計画 では合成RNAを外注する予定でしたが、採択頂いた課題の当初計画していた予算を100万円ほど下回ったためsiRNAを自 前で準備したため当初の想定より時間を要してしまいました。現在、4つの遺伝子に注目しており、これらの遺伝子のエネルギー代謝における作用点についてさらに解析する予定で す。このことを実施するため、細胞培養・遺伝子導入・ATP合成活性・ウエスタンブロットといった細胞生物学・分子 生物学的実験に残りの予算を執行する事を希望します。細胞培養に関わる消耗品類、遺伝子導入試薬、MASCアッセイに 用いる酵素・基質類、抗体やケミルミネッセンス関連試薬を購入する予定です。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Proc Natl Acad Sci USA
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Genes Cells
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FEBS Lett
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