機能未同定のミトコンドリア局在性蛋白質についてノックダウン(KD)細胞のATP合成活性を測定して、新規エネルギー代謝関連因子をスクリーニングした結果、6遺伝子についてATP合成活性に影響する事を明らかにした。また、miRNA安定発現株を作製して4種類について1次スクリーニングの再現性が確認された。 KD株の中で、FoF1-ATP合成酵素複合体の量を変化させた遺伝子pFJ8061に注目した。 これをHeLa細胞で異所的に発現させて、ミトコンドリアに局在していることを確認した。pFJ8061の安定的KD株を用いたところ呼吸鎖複合体へは影響せずFoF1複合体特異的に複合体量が減弱した。発現解析の結果、pFJ8061遺伝子はFoF1-ATP合成酵素を構成する各サブユニットの発現・翻訳へは影響しなかった。一般的にFoF1複合体のアセンブリに必要な因子を欠損させるとサブ複合体が観察される。しかしpFJ8061-KD株はアセンブリ過程で見られるFoやF1-cといったサブ複合体すら認められなかったので、pFJ8061がアセンブリの初期段階に関与している可能性が考えられる。 また pFJ8061遺伝子自身の発現制御について調べた。HeLa細胞に対してグルコース枯渇させると、有意にpFJ8061遺伝子の発現が亢進した。このことは細胞内のエネルギー状態を感知してpFJ8061の発現量が制御され、pFJ8061蛋白質はFoF1複合体のアセンブリに重要な役割を担っていると推測された。但し、pFJ8061を異所的に過剰発現してもFoF1複合体の量が増加しなかったことからpFJ8061単独ではFoF1複合体量を増加することができず、FoF1の各サブユニットの発現誘導やミトコンドリア全体の生合成やFoF1アセンブリに関する因子と協調的に働くことが必要と見られる。
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