新生膵島を観察する系の確立のために、マウスの虹彩上に膵島を移植し、その有用性について検討を行った。RecipientとしてCB17/Icr-Prkdcscid/CrlCrljマウスを用いた。また、DonorとしてMIP-GFPマウス(マウスインスリンプロモーター下でGFP(緑色蛍光タンパク質)を発現する)およびRIP-Lucマウス(ラットインスリンプロモーター下にルシフェラーゼを発現するマウス)を用いた。移植膵島は実体顕微鏡およびIVISシステムによる観察を行うことで評価した。 まず、移植膵島をIVISシステムで評価するためにルシフェリンをマウスに投与する。導入後膵島細胞由来のルシフェラーゼ発光を観察するための最適時間の検討を行った。その結果12分30秒後の撮像で最も高い強度を安定して得ることが可能であることが分かった。 つぎに移植膵島が虹彩内での生着・残存について評価した。移植後、移植3週後でも実体顕微鏡下で膵島の残存を確認した。また、IVISを用いた膵島からのルシフェラーゼ発光を比較すると移植直後よりも移植3週後の膵島で強い発光を観察できた。また、移植膵島の新生・増殖を観察できるかどうか、実際に齧歯類において膵島増殖作用があるGLP-1受容体作働薬のLiraglutideを膵島移植されたマウスに200μg/kgを1日2回2週間投与した。その結果、Liraglutide投与群のルシフェラーゼ発光が増えていることが観察できた。このことより、移植膵島が虹彩内で増殖している可能性を示すことができた。以上のことより、マウス虹彩内に移植した膵島を観察することで、新生膵島を観察するための一つの手段の確立ができた。当初の予定通りに研究は進まなかったが、新たな手法の探索につながったと考えている。
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