研究課題/領域番号 |
24790924
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
野村 和弘 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (70450236)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | エネルギー代謝 / 骨格筋 / 肥満 / 運動 |
研究概要 |
本研究では、PGC1α新規アイソフォーム(PGC1αb/c)が、骨格筋における運動時のエネルギー代謝の制御を通じ、個体の適切な体重やインスリン感受性の維持に重要な機能を果たすという仮説を明らかにすることを目的とした。 まずはPGC1αb/cの発現誘導メカニズムについて検討した。AICAR、β2アドレナリン受容体刺激薬、カフェイン、フォルスコリン、カルシウムイオンなどいずれの運動類似刺激でもPGC1αb/cの発現誘導を認めたが、β2アドレナリン受容体刺激薬が最も顕著にかつ特異的にPGC1αb/cの発現を誘導することを見出した。実際、β2アドレナリン受容体刺激薬をマウスに投与すると、既知アイソフォームPGC1αaの発現増大なしに、PGC1αb/cの発現が特異的に誘導され、また運動前にβブロッカーを投与しておくとその発現誘導が抑制されることを見出した。また、PGC1αb/c欠損マウスでは野生型マウスと比べて、β2アドレナリン受容体刺激薬によるエネルギー消費の増加が有意に抑制されており、これらの結果からβ2アドレナリン受容体刺激を介したPGC1αb/cアイソフォームの発現誘導が、運動によるエネルギー消費の増大に重要な役割を果たすと考えられた。 次に肥満におけるPGC1αb/cアイソフォームの発現について検討した。定常状態でも各アイソフォームの発現は肥満モデルマウスでは低下傾向にあったが、β2アドレナリン受容体刺激薬投与によるPGC1αb/cアイソフォームの発現誘導が、肥満モデルマウスでは減弱していることを明らかにした。さらに肥満モデルマウスではβ2アドレナリン受容体刺激薬によるエネルギー消費の増加が抑制されており、これらの結果から、肥満ではβ2アドレナリン刺激によるエネルギー消費の増加が抑制、即ちアドレナリンに対する抵抗性が生じていると考えらた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において、肥満では骨格筋においてアドレナリン抵抗性が生じていることを見出し、またそれに伴うPGC1α新規アイソフォームの誘導不全が肥満の病態形成にかかわる可能性を示したことから、PGC1α新規アイソフォームの肥満の病態における関与について明らかにするという本研究の目的を達成しつつあると思われ、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
肥満では骨格筋におけるアドレナリン抵抗性が生じていることを明らかにしたが、次に肥満ではなぜ「アドレナリン抵抗性」が起こるのかさらに詳細な解析を進める。具体的には肥満モデル動物におけるβ2アドレナリン受容体の発現あるいは活性制御機構の解析、またβ2アドレナリン受容体の下流分子からPGC1αb/cの発現制御までのシグナル伝達機構について分子レベルで詳細に解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
β2アドレナリン受容体ノックアウトマウスを導入し、運動時のPGC1αb/c遺伝子の発現誘導をリアルタイムPCRで解析し、β2アドレナリンシグナルの重要性を明らかにする。またβ2アドレナリン受容体の下流の細胞内シグナルについて非肥満マウスとの違いから肥満動物でのPGC1αb/c遺伝子の発現誘導の減弱機構を解析する。
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