研究課題
近年、低体重で出生した子は将来肥満や糖尿病を発症するリスクが高くなる可能性が示唆されている。これまでに我々の研究グループにおいて低出生体重マウスを作製・解析したところ、出生時の膵β細胞量の著明な減少と、その後の膵β細胞量の増殖が同様に起こることを見出した。しかしながら、この膵β細胞量変化のメカニズムに関しては、十分な解析はなされていない。これまでに、飢餓の条件下ではショウジョウバエにおいてインスリン受容体の発現が増加することが報告されていることから、我々は低出生体重児の膵β細胞ではインスリンシグナルが重要な役割を果たしているという仮説を構築し、検討を開始した。まず我々は、低出生体重モデルマウスの作成を行った。胎生期に母親マウスの摂餌量を70%に低下させたところ、対照群(CG)と比較して飢餓ストレス群(RG)における出生時の有意な体重減少と膵β細胞量減少が認められた。しかしながら増殖期にあたる 8週齢においては、CG群と比較してRG群の方が有意に膵β細胞量が増加しており、細胞増殖に関与する何らかの遺伝子発現変化があるものと考えられた。そこで我々は、それぞれの群のマウスから単離した膵島を用いてマイクロアレイ解析を行ったところ、インスリンシグナルにおける重要な分子であるIRS2の発現が有意に亢進していた。さらに、それぞれのマウスの単離膵島から抽出した蛋白を用いて解析を行ったところ、RG群の膵島において有意なインスリンシグナルの亢進が認められた。これらの結果から、増殖期においては膵β細胞量も同様に増加しており、またそのメカニズムとしてインスリンシグナルが関与していることが示唆された。低出生体重マウスは、出生時においては膵β細胞量が減少しているものの、その後急速な増大を呈することが示された。その分子メカニズムとしては、膵β細胞におけるインスリンシグナルの亢進が考えられる。
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Diabetology International
巻: 5 ページ: 43-52
Diabetologia
巻: 56 ページ: 1088-1097