研究課題
研究代表者は、これまでに、インスリン/IGFシグナルを仲介するIRS-2にユビキチンリガーゼNedd4が結合すると、IRS-2がモノユビキチン化され、インスリン/IGFに応答したIRS-2のチロシンリン酸化が促進、インスリン/IGF活性が増強することを見出してきた。本研究では、この現象の分子機構と生理的意義の解明を目的としている。平成26年度は、まず、Nedd4とIRS-2の相互作用の特異性を検討した。その結果、Nedd4と類似構造を持つNedd4-2はIRS-2に結合しないこと、Nedd4はIRS-1をユビキチン化しないことなどがわかった。次に、Nedd4によるIRS-2のユビキチン化部位を調べた。IRS-2のリジン残基の変異体を用いた前年度の解析からIRS-2のC末端側の複数のリジン残基がユビキチン化部位であることが示されていたが、定量的質量分析によって特に1331番目のリジン残基が最もユビキチン化を受けやすいことが示された。また、前年度にモノユビキチン化されたIRS-2を認識するタンパク質としてEpsin1を同定していたが、IRS-2やEpsin1の変異体を用いた結合解析から、IRS-2にC末端付近に付加されたユビキチンにEpsin1のユビキチン結合モチーフが結合することがわかった。初年度からの解析を総合し、「Nedd4によってユビキチン化されたIRS-2はEpsin1と相互作用することにより細胞膜にリクルートされ、そこに存在するインスリン/IGF受容体キナーゼによってチロシンリン酸化されやすくなり、インスリン/IGFシグナルが増強される」という全く新しい分子機構が存在すると結論した。また、肝細胞では、細胞が低栄養状態に置かれると何らかの仕組みでNedd4とIRS-2の複合体形成が促進し、明らかとした機構を介してインスリン感受性が増強する可能性が示された。
広島大学医歯薬保健学研究院 医化学研究室http://home.hiroshima-u.ac.jp/ikagaku/
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