研究課題/領域番号 |
24790929
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
石倉 周平 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 助教 (40336631)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 糖尿病 |
研究概要 |
ヒト血中には、インスリン受容体の切断により、その細胞外ドメインから構成される可溶性インスリン受容体(Soluble Insulin Receptor, sIR)が存在し、糖尿病患者の血中では、健常者と比べてその量が増加している。本研究では、生化学的及び細胞生物学的手法を用いて、①sIRとインスリンの結合、②sIRによるインスリンシグナル伝達系の阻害、③sIRと結合したインスリンの定量、④マウスsIRの同定と定量について検討し、糖尿病とsIRとの関連を明らかにする。平成24年度中に、化学架橋法により組み替え型sIRと標準品インスリンが結合しうることを明らかにした。また、HepG2細胞におけるインスリンよるAktのリン酸化が、高濃度の組み替え型sIRにより、阻害されることを示した。さらに、遠心式限外ろ過フィルターを用いて、組み替え型sIRと標準品インスリンにおいて、sIR結合インスリンの定量法を確立した。また、インスリン受容体に対する抗体を用いても、sIR結合インスリンの定量法を確立した。最後に、マウスsIR定量法のために、組み替え型マウスsIRの培養細胞における発現系を作成した。これらの結果は、ヒト血中でsIRがインスリンと結合し、不活化していることを支持している。また、sIR結合インスリンの定量法が確立できたことので、ヒト血中でsIRと結合し、不活化されているインスリンを定量することが可能となった。組み替え型マウスsIRが作成可能となったので、マウスsIRの同定と定量法の確立が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、糖尿病とsIRとの関連を明らかにするために、①sIRがインスリンと結合できることを化学架橋剤およびFPLCによるゲル濾過を用いて証明する、②培養細胞を用いて、Aktのリン酸化やGLUT4のトランスロケーションなど、インスリンシグナル伝達系のsIRによる阻害について検討する、③遠心式フィルターによりインスリンをsIR非結合型と結合型に分離後、超高感度ELISA法により定量し、sIR結合型インスリンの定量法を開発する、④超高感度ELISA法によるマウスsIRの同定と定量法を確立し、糖尿病モデルマウスにおけるsIRの定量を行う。 これまでに、①sIRとインスリンが結合すること、②培養細胞においてsIRがインスリンシグナリングを阻害すること、③sIR結合インスリン定量を確立、④組み替え型マウスsIRの発現系を確立することができた。平成24年度の計画に対して約70%の達成度であり、やや遅れている感は否めない。理由としては、①~④を明らかにするためには、新しい実験系を確立する必要があり、その過程において予想外の現象が観察されたことがあげられる。例えば、①sIRとインスリンの化学架橋実験では、インスリンがsIRに結合して高分子量化するだけでなく、高濃度のインスリンを用いると、sIR非依存的にインスリンが多量体を形成し、高分子量化し、区別を難しくした。また、②の実験では組み替え型sIRを産生するCHO細胞の培養上清そのものに、インスリンシグナル阻害物質が含まれていて、解析を難しくした。しかし、平成24度中にこれらの困難を克服し、今後は計画通りに研究が進行することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、まず、平成24年度に得られた知見をさらに深め、確実なものとしていく。すなわち、①sIRとインスリンの結合をより確かなものにするために、FPLCを用いた解析を行う。②Aktのリン酸化のsIRによる阻害が認められたので、その表現型としてインスリンによるGLUT4のトランスロケーションへのsIRの影響を調べる。③標準品を用いたsIR結合インスリンの定量法が確立できたので、今後は健常人ヒト血清を使って測定を行う。④組み替え型マウスsIRの培養細胞における発現系が作成できたので、マウスsIRに結合する抗体のスクリーニングを行う。得られた抗体を用いて血中マウスsIRの同定、定量法の確立、さらにその高感度化を行う。 平成24年度中に、生化学的、細胞生物学的手法を用いて、sIRがインスリンと結合し、不活化しうることを示し、またsIR結合インスリンの定量を確立できたので、今後はヒトやモデル動物を用いて、sIRと糖尿病との関連をさらに明らかにしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度と同様に、生化学的、細胞生物学的実験に必要な実験器具、試薬が必要となるので購入する予定である。 さらに平成25年度は、マウスを用いた実験を計画しているので、これに費用を充てることを計画している。
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