研究課題
ヒト血中には、インスリン受容体の切断により、その細胞外ドメインから構成される可溶性インスリン受容体(Soluble Insulin Receptor, sIR)が存在し、糖尿病患者の血中では、健常者と比べてその量が増加している。インスリン受容体は細胞内糖代謝と糖尿病の発症において中心的な役割を担っており、その切断はインスリン抵抗性や糖毒性に深く関与している。本研究では、sIR産生の生理的意義を明らかにするために、培養細胞を用いたsIR産生のin vitroモデルを構築した。検討を行ったヒト細胞株のうち、ヒト肝がん細胞株であるHepG2細胞においてのみ、sIRの産生が認められた。興味深いことにHepG2細胞におけるsIRの産生は培養液中のグルコース濃度依存的であった。すなわち、培養液中のグルコース濃度を高くすることにより、sIR産生量が増加した。このHepG2細胞モデルを用いて、sIR産生の分子メカニズムについて検討したところ、sIR産生にはO型糖鎖修飾が重要であることが明らかとなった。また、カルシウム依存性のプロテアーゼがIRの切断酵素である可能性が示唆された。以上、本研究により、HepG2細胞を用いることにより、sIR産生の分子メカニズムをin vitroで解析することが可能となった。さらに研究を進めることにより、インスリン受容体切断の分子メカニズムが明らかとなり、sIR産生の生理的な意義が解明されることが期待される。
すべて 2014
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Biochemical and biophysical research communications
巻: 445 ページ: 236-243
10.1016/j.bbrc.2014.01.187