研究課題/領域番号 |
24790931
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
久木留 大介 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (10555759)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 糖尿病合併症 / 糖尿病網膜症 / 低血糖 / 活性酸素 |
研究概要 |
血管内皮細胞またはmtROS除去酵素であるMnSODをアデノウイルスで強制発現させた血管内皮細胞を低グルコース(2.5mM)下または、低酸素状態(1% O2)で培養し、1)mtROSを還元型Mito Tracker Redを使用し共焦点レーザー顕微鏡で検討、2)細胞の低酸素状態をpimonidazole、HIF-1α抗体を使用した蛍光免疫染色で検討、3)HIF-1α蛋白、VEGF蛋白の発現をwestern blot法で検討、4) VEGF mRNA発現をreal time RT-PCR法で検討し、評価した。 以下に結果を示す。1)低グルコース(2.5mM)培養細胞では、正常グルコース(5mM)培養細胞と比べて、ミトコンドリア由来活性酸素産生増加を認めた。また、低酸素培養細胞においても同様に21%酸素濃度培養細胞と比べてミトコンドリア由来活性酸素産生増加を認めた。また、MnSODをアデノウイルスで強制発現させた細胞を使用して同様に比較すると ミトコンドリア由来活性酸素産生減少を認めた。2)pimonidazole、HIF-1α抗体を使用した蛍光免疫染色における検討においても、低グルコース(2.5mM)培養細胞では、正常グルコース(5mM)培養細胞と比べて蛍光増強を認め、また、低酸素培養細胞においても同様に21%酸素濃度培養細胞と比べても蛍光増強を認めた。その蛍光増強は、MnSODをアデノウイルスで強制発現させた細胞を使用して同様に比較すると減少を認めた。3)低グルコース培養細胞におけるHIF-1α蛋白、VEGF蛋白の発現はwestern blot法では、明確に示せなかった。しかし、VEGF抗体の免疫染色では、低グルコースまたは低酸素培養細胞において発現増強を認めた。4)VEGF mRNAに関しては、低グルコースまたは低酸素培養細胞において発現増強を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
急激な血糖是正や低血糖で糖尿病合併症の標的組織で低酸素状態が誘導され、この低酸素状態から産生されるmtROSが、さらに糖尿病合併症を進展させるという仮説の検証を進めている。 組織低酸素を検出するプローブをこれまで使用していたpimonitazoleやHIF-1以外にも使用し検討を進めていたが、実験系がまだ確立できておらず時間を要している。 糖尿病状態マウスへのインスリン使用による急激な血糖変動を再現する実験系の確立に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
I:in vitro研究 (培養網膜内皮細胞を用いた研究):網膜血管内皮細胞またはmtROS除去酵素であるMnSODをアデノウイルスで強制発現させた網膜血管内皮細胞を低グルコース(2.5mM)下または、低酸素状態(1% O2)で培養し、1)mtROSを還元型Mito Tracker Redを使用し共焦点レーザー顕微鏡で検討、2)HIF-1α蛋白、VEGF蛋白、トロンボモジュリン(TM)蛋白、プラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI-1)蛋白の発現をwestern blot法で検討、3) VEGF mRNA、TM mRNA、PAI-1 mRNA、解糖系関連 mRNA発現をreal time RT-PCR法で検討し、評価する。 II:in vivo研究 (eMnSODTgマウスを用いた研究):WTマウス、eMnSODTgマウスにストレプトゾトシン投与により糖尿病を導入する。その後、生食投与群、インスリン投与群とインスリン+グルコース投与群に分ける。網膜組織切片を用い免疫組織法で1)組織低酸素検出キットを用いて組織的低酸素状態を検討、2)VEGF発現、TM発現、PAI-1発現を検討、3)毛細血管瘤、無血管領域、retinal leukostasis、酸化ストレス(8-OHdG発現)、糖化蛋白蓄積の分布や程度を検討し、評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費: 185万円(内訳;細胞培養関連:20万円、マウス飼育維持費:30万円、mRNA抽出・解析:30万円、蛋白発現評価関連:15万円、mtROS検出関連:20万円、組織低酸素検出キット:20万円、免疫染色関連:30万円、その他試薬:20万円) 旅費:50万円(内訳;糖尿病地方会(沖縄):6万円、糖尿病合併症学会(旭川):9万円、お欧州糖尿病学会EASD(バルセロナ):35万円) 人件費・謝金:0円 その他:0円
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