研究課題/領域番号 |
24790934
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
永山 大二 東邦大学, 医学部, 助教 (50385829)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 脂質代謝 |
研究概要 |
我々は高度高TG血症において過半数で認められたApoAV変異の本態を検討している。最終的にはApoAV変異を有する症例より採取した血清からApoAV蛋白を抽出し、in vitroにおけるLPL反応系への影響を明らかにする予定である。現在、対照群となる非高度高TG血症例から採取した血清を用いApoAVは抽出した。抽出法として抗体アフィニティクロマトグラフィ法を用い、ApoAV蛋白の存在はELISA法及びWestern blot法にて確認した。これは、既知の報告検索内においても前例のない試みである。今後in vitroでのLPL反応系を確立する作業を進め、その後同様にして変異者から抽出したApoAVと反応系の相違を比較検討していく予定である。 一方、並行してApoAV変異陽性者のTG rich lipoprotein(TGRL)の性質を調べることも行っている。高TG血症例においてApoAVはVLDLのようなTGRLに多く分布していることが分かっている。我々は高TG血症例の血清中VLDLを抽出し、血清TG濃度で補正した上でLPL加水分解反応を調べた。結果、ApoAV変異陰性者、変異陽性者(ヘテロ)、変異陽性者(ホモ)の順番に反応が低下していた。このことから、ApoAV変異はTGRLの性質を変えることでLPL反応を阻害している可能性が示唆された。また、同時に血清中のApoAV濃度を(血清TG濃度で補正し)測定した結果、ApoAV変異陰性者、変異陽性者(ヘテロ)、変異陽性者(ホモ)の順番に濃度は低かった。このことから、ひとつの機序として「ApoAV変異例では本来LPL反応に必須なApoAVがTGRLに分画しにくくなる」ということが高TG血症の発症に関与している可能性が示唆された。これらの発見は、やはり前例を見ないものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血清中のApoAV蛋白の抽出を行ったものの(ELISA、WBにて存在を確認)、それを用いたin vitroでのLPL反応系の確立がまだ不十分である。LPL反応系は、反応液中の温度、pHを至適化しLPLの補酵素であるApoC2、反応により遊離した脂肪酸をbindするアルブミンを添加した上で抽出したApoAVを添加する。非変異例から抽出したApoAVを添加すればLPL反応が促進するが、変異例のものを添加するとむしろ反応が抑制される、といった現象が観察されれば仮説通りである。現時点では、非変異者から抽出したApoAVを添加しても、反応の促進を認めるに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
抽出したApoAVの活用については、現時点でまだLPL反応の促進を見るに至っていない。反応系の調整及び、抽出法の見直しが必要と考えられる。 また、ApoAV変異者を検索し、陽性者からは同意の上血清を採取する必要があるため、引き続き(RF-PCR法にて)リサーチを行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
今後研究を進めるにあたり、下記における研究費使用の用途が見込まれる。 ApoAV症例の検出:PCRキット 患者血清からのApoAVの抽出:抗体アフィニティカラム抽出に関わる資材購入、ELISA・WB用キット LPL反応系の確立:ウシミルクLPLやApoC2、BSAなどの試薬購入 尚、試薬が予測したほどには消費されなかったため、今回は約20万円の繰越額が生じた。
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