研究課題/領域番号 |
24790937
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
三城 恵美 (佐藤 恵美) 北里大学, 薬学部, 助教 (00455544)
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キーワード | チロシン硫酸化 / 硫酸化チロシン認識抗体 / 質量分析 / 翻訳後修飾 |
研究概要 |
本研究では、「チロシン硫酸化」という翻訳後修飾に着目してプロテオーム解析することにより、これまでに見つかっていないが機能的に有用であることが想定される新しいチロシン硫酸化タンパク質ならびにペプチドを発見することを目的とした。 不安定であると言われる硫酸化ペプチドの性質を調べるために、モデルペプチドやタンパク質を用いて、酸やアルカリ、熱に対する安定性の検討を行った。その結果、通常の分画・分析作業には問題ない安定性があることが分かった。さらに、質量分析で判別できないリン酸化と明確に区別するために、脱硫酸化するための酸加水分解や脱リン酸化のためのアルカリ加水分解やアルカリフォスファターゼ処理の条件検討を行った結果、既報通り酸加水分解は可能であったが、アルカリ加水分解では、脱硫酸化しないもののペプチド自体が分解されたり修飾されてしまうことが分かった。リン酸化との区別は、アルカリフォスファターゼ処理が良いことが分かった。 リン酸化ペプチドの効率的な分離のため、酸性のBufferを用いたSCXによるイオン交換クロマトグラフィーを用いる報告があるため、これをさらにマイナスイオンの強い硫酸化ペプチドに応用して、リン酸化と硫酸化の効率的な区別をしようと試みたところ、差はみられたが、主鎖ペプチドの配列に依存してしまい、汎用性のある方法にはならなかった。解析が難しいとされる質量分析装置での測定は、測定条件の調整を行ったり、解析ソフトウエアのメーカーとともにチロシン硫酸化解析用のパラメーターを調節したりすることで測定と解析を可能にした。 チロシン硫酸化のみに注目して研究してきたが、平成25年度は、質量分析では区別をすることが難しいリン酸化との違いを明確にしながら研究することができ、新たな視点でそれぞれの特徴を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、チロシン硫酸化ペプチドの基本的な性質を自分自身でとらえて、これからの探索に欠かせない情報を多く得ることができた。大腸菌で発現させた硫酸転移酵素を用いて、インビトロで硫酸化反応を行い、これまでは35Sを用いてRIで検出する方法が主流だったが、質量分析装置にて、硫酸化ペプチドの親イオンをターゲットとして面積値で定量することも可能となった。イオン交換クロマトグラフィーによる分離は、リン酸化と硫酸化を理論通り分離することはできたが、ペプチド主鎖のアミノ酸に依存するため、多種類のペプチドには適応できないことが分かるなど、仮説通りにいかないこともあったものの、抗体カラムを使用するなど他の方法で解決できるため、対応可能と考えられる。 年度途中で産前産後休暇を取得してしまったが、1年間の研究の延長が認められたため、さらに研究を進めていく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
チロシン硫酸化ペプチドの性質や、解析方法などが整ってきたところなので、これから本格的に新規硫酸化タンパク質・ペプチドの探索を進めていく。さらに、実験動物の組織や培養細胞を用いて、網羅的なプロテオーム解析をするために、二次元電気泳動や、抗体を用いたウエスタンブロッティングを行うことによって、チロシン硫酸化タンパク質・ペプチドの探索を進めていく。新たに見つかったタンパク質に関して、機能解析まで行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年10月28日に出産し、それに伴って、10月1日から1月31日まで産前産後休暇や有給休暇、無給休暇を取得した。科研費は3カ月以上の産休・育休を取得した場合、1年間の研究期間延長が認められることと、妊娠中は研究がしにくい状況だったので、来年度に繰り越す予定で控えめに使用した。平成26年度中に研究を完了できるように、研究を進める予定である。 まだ使用していない硫酸化チロシン認識抗体の合成と検討:以前の所属研究所で作製したファージ抗体は、2種類できており、そのうち1種類を大量合成して使用していた。もう1種類も特異性に問題はなく、使用できることを確認しているうえ、現在も保管されているため、大量合成することで使用することとする。また、チロシン硫酸化認識抗体は、研究開始当時、論文上では報告があったものの、市販されていなかったが、最近になって市販されるようになったため、これと我々の作製した抗体を併用して研究を進める。 チロシン硫酸化タンパク質/ペプチドの探索と機能解析:硫酸化チロシン認識抗体で特異的な濃縮を行ったものをMS、MSMS解析にて、同定を行う。リン酸化と区別するために、アルカリフォスファターゼ処理や、SCXのようなイオン交換での分離の確認も行う。
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