研究課題
若手研究(B)
糖尿病および糖尿病性細小血管障害の発症・進展において、血中のLECT2濃度がどのように変化するかについてを検討するために、糖尿病マウスモデルであるストレプトゾトシン誘発糖尿病マウス、2型糖尿病モデルマウスであるKK-Ayマウスについて、ELISAをつかって血清中のLECT2濃度の測定を行い、野生型マウスとの比較を行った。その結果、有意な差が認められたモデルと差が確認できなかったモデルが存在した。モデルにより測定を行った週齢が異なることもあり、より詳細な検討が必要であると考えている。また、LECT2遺伝子改変マウスの導入については、遺伝子欠損マウスは当初予定のホモマウスのペアではなくヘテロのオスマウスのみで導入することとなり、体外受精によるクリーニング及びホモマウスの作出を行い、安定的に実験に供する基盤を作るところから開始し、現在、25年度夏に実験開始できるようマウスのブリーディングを行っている。培養細胞を使いLECT2受容体の発現レベルをフローサイトメトリー解析し、細胞内作用機序解析への手がかりを得ることを試みために、CHO細胞由来のリコンビナントヒトLECT2の大量精製を行った。現在、蛍光ラベル化したLECT2によるフローサイトメトリーでどの培養細胞種にLECT2を作用させるかを検討している段階である。これと並行して、ヒト血清を用いたLECT2のELISA解析によって、糖尿病関連疾患との関連性が見出せている。さらに、分子構造的な解析によって、LECT2が亜鉛結合タンパク質であり、LECT2の安定化にこの亜鉛イオンが必須であることを見出した。
3: やや遅れている
LECT2遺伝子欠損マウスおよびLECT2遺伝子過剰発現マウスを導入するのに委員会の承認、続いて提供元のマウスが確保できず、LECT2遺伝子改変マウスの繁殖・維持系統の確立に費やす期間が大幅にかかったため、実験に供することが出来なかった。そのため、マウスを使用した研究内容については、当初の予定を大幅に遅延させざるを得ない事態となっている。一方で、当初の予定に加えてヒト血清を使用した検討が可能となったため、よりヒトの病態について検討できるようになった点は、マウスのみの研究に比べて大きく発展している点である。また、LECT2のタンパク質分子としての特性の解明も進めることに成功し、タンパク質安定化には、結合している亜鉛イオンが必要である知見を得られた点も、LECT2の生理活性解明に大きく貢献する結果である。
糖尿病の細小血管障害についてLECT2がどのように関与するかが、ヒト血清を用いた解析により見出されつつある。そのため、LECT2遺伝子改変マウスについては、ヒト血清の解析より得られた結果を反映させるような系で実験系を行う必要性が生じている。LECT2遺伝子改変マウスを実験に供するようにできるまでは25年度の夏までかかる見込みであり、それまでに培養細胞を使用するなど、マウスを使用しない面での研究計画を遂行していきたい。
主に試薬類、消耗品、培養細胞と野生型マウス購入に使用する予定である。試薬類は培養細胞用の培地、LECT2リコンビナントタンパク質精製に必要なイオン交換樹脂類、培養細胞の解析によりターゲットになりうる細胞内シグナルに対する抗体なども必要である。また、情報交換に必要な学会参加費用ならびに論文校正費用も計上した。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
FEBS Letters
巻: 587 ページ: 404-409
10.1016/j.febslet.2013.01.025