当研究グループは、膵β細胞特異的PI3Kノックアウトマウスを中心に解析し、PI3キナーゼ(PI3K)/Aktがインスリン分泌の調節に重要な役割を果たしていることを解明してきた。単離膵島のマイクロアレイ解析より、アポリポタンパク質、コレステロールのトランスポーターであるABCA1、LDL受容体が低下しており、脂質代謝異常が生じていることが示された。また、GLP1受容体の発現低下や、チトクロームp450などのミトコンドリア関連遺伝子の発現が著明に低下していることが解明された。GLP-1アナログを投与した実験では、膵β細胞特異的PI3Kノックアウトマウスではインスリンの分泌は抑制され高血糖が生じた。また、経口ブドウ糖負荷試験では血糖上昇がある程度抑えられることより、膵β細胞外作用が予想された。また、PI3K依存的なmicroRNA発現調節解析のために、単離膵島のmicroRNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、1157プローブ中、32のmicroRNAの発現が増加、36のmicroRNAの発現が低下していた。In silico解析により、mir-223などmicroRNAの一部がABCA-1など脂質代謝遺伝子の発現を低下させることが予想された。現在、GLP-1アナログの膵α細胞に対するグルカゴン抑制など、膵β細胞以外の作用機序についても解明を行なっている。glucagon-CreノックアウトマウスをPI3K flox/floxマウスと交配し、膵α細胞特異的PI3Kノックアウトマウスを作成し、解析を開始した。
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