研究概要 |
我々は、褐色脂肪細胞分化の培養細胞モデルを独自に入手し、これら分化過程をマイクロアレイにて詳細に解析することで新しい褐色脂肪特異的分化制御因子Aの抽出に成功した。このA遺伝子を、2つ以上の特異的なsiRNAを用いてノックダウンすると顕著に褐色脂肪細胞の分化を抑制することも見出している。また、マウスの各種脂肪組織において遺伝子Aの免疫染色を行うと褐色脂肪組織特異的に染色されることも見出している。 我々は、既にT37i成熟褐色脂肪細胞および3T3-L1成熟脂肪細胞にグルカゴンシグナル経路を模倣すると考えられているcAMP (Nat Med 4, 612-617, 2012)を用いて、cAMP添加、非添加を行い脂肪細胞活性化状態と非活性化状態を作成した。この状態の培養上清をそれぞれ回収し質量分析機を用いて網羅的に分泌タンパクの解析同定を行った。その結果、脂肪細胞活性化状態で強く分泌が促進される分泌蛋白Cyclophilin Aを同定している。さらに、ヒト前駆脂肪細胞分化システムの立ち上げにも成功しており、よりヒト生体内に近い状態で、Cyclophilin A分泌制御機構の解明を進める体制も確立した。平行してH25年度には、東北大学病院腎高血圧内分泌科の外来患者から、動脈硬化進展予測因子となり得る生理活性物質の測定に関して、東北大学医学部倫理委員会での審査および認可を得た。H26年度には、外来患者約360名から同意を得た後、血液および尿サンプルの回収を終了した。Cyclophilin Aならびに、すでに心血管系疾患の一つである糖尿病合併症の進展予測因子と知られているangiotensinogenなどの測定に関してもELISA実験系の立ち上げにも成功している。動脈硬化進展予測に関して、コントロールとなる頸動脈エコーによるMax IMTの測定およびPWVの測定も終了している。現在、2型糖尿病患者におけるバイオマーカーとしての有用性検討を行っているところである。
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