研究課題
若手研究(B)
平成24年度は絶食誘導性グレリン分泌に関与する視床下部神経核の同定を目的に、マウスを用いて視床下部外側野(LHA)破壊後の絶食による血中グレリン濃度の変動を検討した。C57BL/6Jマウスの成熟雄を用いて片側のLHAを破壊し、3~5日後に自由摂食下とその後の24時間絶食後に血液を採取した。その後、脳の凍結切片を作製し、光学顕微鏡下で破壊領域を観察した。LHAの破壊に成功した個体をhit群、LHA以外の領域を破壊した個体をmiss群として解析を行った結果、hit群及びmiss群でも絶食誘導性グレリン分泌の有意な増加が見られた。電気破壊を行っていない対照群とhit群の自由摂食下の血中アシル化グレリン濃度を比較すると、hit群で有意に増加したが、対照群とmiss群の間では自由摂食下における血中アシル化グレリン濃度に差は見られなかった。以上の結果から、LHA破壊マウスの血中アシル化グレリン濃度は絶食で上昇しており、LHAは絶食誘導性グレリン放出の起始核ではないことが強く示唆された。一方、hit群において自由摂食下の血中アシル化グレリン濃度は対照群と比較して有意に高くなっており、LHAはグレリン分泌に対して抑制性である可能性が強く示唆された。また、グレリン産生細胞株を用いた検討から、Gタンパク質共役型受容体のひとつであるGPR120がグレリン細胞株に高発現していること見出し、GPR120のアゴニストの添加によってグレリン分泌が減少すること示した。このGPR120アゴニストによるグレリン分泌抑制作用は、マウスを用いたin vivo実験でも確認され、GPR120による新たなグレリン分泌制御機構を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の計画では、グレリン分泌を刺激する神経が交感神経のどの神経核がグレリン分泌に関与するかを同定する(起始核の同定)を行うために、神経核領域への電気刺激による神経核の破壊を行い、主に視床下部外側野破壊によるグレリン分泌を検討した。現在は、引き続き、視床下部弓状核と室傍核の破壊を行っており、多少の遅れはあるものの順調にそれぞれの神経核の影響を検討できている。また、 Gタンパク質共役型受容体のひとつであるGPR120がグレリン細胞株に高発現していること、及びGPR120のアゴニストの添加によってグレリン分泌が減少すること明らかにした。さらに、マウスを用いた実験から、GPR120アゴニスト投与によって絶食誘導性グレリン分泌の増加を抑制すること示し、GPR120はin vitroだけでなく、in vivoにおいてもグレリン分泌に関与すること明らかにした。これらの結果は、現在専門誌への論文投稿準備中であり、順調に進捗していると考えられる。
視床下部外側野は絶食誘導性グレリン分泌の増加には関与しなかったため、平成25年度は昨年度に引き続きグレリン分泌に関与する視床下部神経核の破壊実験を行鵜予定である。本年度中には候補となっているすべての神経核破壊実験を終了し、グレリン分泌に関与する神経核の同定を行う予定である。同定後は、免疫組織化学的手法を用いて、その神経核に存在するニューロンを同定する。さらに、胃において、グレリン細胞へ投射するニューロンを免疫組織化学的手法により形態学的に同定する。また、細胞株を用いた実験では、グレリン細胞に発現する他のGPCRに着目して、リガンドによる刺激実験やsiRNAによるノックアウト実験を行い、新たなグレリン分泌機構を明らかにする。
物品費として使用する。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)
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