研究課題
レプチンによる炎症免疫調節の分子機構の解明を目的として、本年度、以下の検討を行った。1.栄養飢餓が及ぼす影響:従来より、栄養飢餓が胸腺の萎縮やT細胞の分化障害をもたらすことが知られている。我々は既に、絶食による血中レプチン濃度の低下が骨髄B細胞の分化障害をもたらすことを報告している。そこで、本研究では、絶食に伴う骨髄単球系の変化を検討した。野生型マウスを48時間絶食させたところ、体重や脂肪組織の減少とともに、血中レプチン濃度は著しく低下した(対照3.4 ng/ml vs. 絶食0.2 ng/ml)。この時、FACSを用いて骨髄細胞分画を検討したところ、CD11b陽性Gr1陰性細胞の比率は変化しなかった。以上より、絶食は、骨髄B細胞の分化障害をもたらすが、骨髄単球系には影響を与えないことが示唆された。2.過栄養が及ぼす影響:肥満に伴う脂肪組織へのマクロファージ浸潤は、メタボリックシンドロームの基盤病態として重要である。脂肪組織に浸潤する炎症促進性マクロファージは、MCP-1/CCR2系により骨髄より遊走することが報告されているが、末梢血単球の段階で既に炎症性変化を示すことが知られている。そこで本研究では、野生型マウスに高脂肪食(60%脂肪含有)を負荷し、骨髄細胞におけるCCR2遺伝子の発現を検討した。高脂肪食負荷2週の早期より、骨髄細胞におけるCCR2発現が有意に上昇した。一方、遺伝性肥満ob/obマウスでは、野生型マウスに比較して、骨髄細胞におけるCCR2の遺伝子発現が低下した。以上より、肥満に伴う高レプチン血症が骨髄細胞のCCR2発現に影響を及ぼすと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
栄養飢餓、過栄養の二局面から、骨髄における免疫担当細胞の質的・量的変化に関する検討を順調に行っている。急性炎症モデルである腎虚血再灌流障害モデル、慢性炎症モデルである一側尿管結紮腎線維化モデルの立ち上げも実施している。
栄養センサーとしてのレプチンの炎症免疫調節作用の意義と分子機構について、引き続き検討する。特に、飢餓あるいは過栄養状態において種々の病態モデルを作製することにより、病態生理的意義の解明に繋げたい。
消耗品を中心とする物品費に使用する。・分子生物学,生化学関連試薬(制限酵素等):200,000円・実験動物関連(飼料等):800,000円・細胞培養関連(血清等):300,000円
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