背景・目的 日本人においてGCN2のSNPと2型糖尿病に有意な相関が報告された。GCN2はアミノ酸欠乏時にfree tRNAの増加をリガンドとして活性化される分子である。我々の検討ではGCN2は膵島に強く発現しており、膵β細胞におけるGCN2の役割と2型糖尿病発症の関与を考え解析を開始した。 方法 全身性GCN2ホモ欠損マウス(GCN2-/-マウス)を作製し解析した。 結果 113人の被験者でOGTT、クランプを行い評価したところ、GCN2のSNPを有する群でインスリン分泌の指標が有意に低下していた。高脂肪食(HFD)下飼育GCN2-/-マウスの耐糖能は悪化し膵β細胞量は減少した。膵島ではmTORC1活性の亢進とインスリンシグナルの減弱化が認められた。その機序を明らかにする為、通常食(NCD)とHFDで飼育したマウスの膵島で比較すると、HFD下の膵島でGCN2が有意に活性化しており、複数のアミノ酸の濃度が有意に低下していた。 結論 HFD GCN2-/-マウスは膵β細胞量の減少を示し、mTORC1シグナルの恒常的亢進によるネガティブフィードバックが、インスリンシグナルの低下から膵β細胞量を引き起こす一因であると考えられた。HFDでインスリン需要が増加し、相対的に膵β細胞内のアミノ酸の濃度が低下することによりGCN2が活性化され、膵β細胞量の維持に関与していることが示唆された。
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