研究課題/領域番号 |
24790945
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
福岡 秀規 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (80622068)
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キーワード | ACTH産生腫瘍 / ErbB受容体 / POMC |
研究概要 |
我々はこれまで、クッシング病におけるACTH産生下垂体腫瘍に発現しているEGF受容体(EGFR)が治療薬としての分子標的となりうる事を示してきた。今回、本研究ではEGFRとネットワークを形成しているEGFRファミリーであるErbB1-4が分子標的になりうるかを検討している。現在クッシング病患者の術後組織として44検体を得る事が出来、ErbB1-4をターゲットとしたカネルチニブの効果を検討した。カネルチニブはEGFRのみを分子標的とするゲフィチニブに耐性を示す腫瘍に対してもACTH前駆体であるPOMCの発現抑制効果、ACTH分泌抑制効果を示した。その腫瘍中でのErbB受容体発現パターンによる解析では、ErbB4発現の多い腫瘍においてPOMC発現抑制、ACTH分泌抑制効果が強く、ErbB3発現の多い腫瘍では効果が弱い事が示された。次にErbB受容体の下流分子としてPOMC発現に重要な役割を担っている事が知られているcyclin Eに着目し、Cyclin E阻害薬であるロスコビチンを投与したところ、カネルチニブに対する反応性が高い腫瘍においてロスコビチンによるPOMC発現抑制効果が強い事が示された。これらの結果はErbB4キナーゼを阻害することにより腫瘍でのPOMC発現を抑制し、ACTH分泌を抑える事が出来る可能性がある。ACTH産生下垂体腺腫はミクロ腺腫が多くその局在診断、手術的根治が難しく、再発も多い事が知られている。コントロール不良の場合には5年生存率は50%と言われており、分子標的薬の新たな開発が急務である。本研究が将来的なACTH産生腺腫に対する分子標的薬の実現化に結びつく事を目指し現在研究を進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究補佐員が今まで行った事のない技術であったため、その系の確立、解析にやや時間を要した。今年度よりさらに大学院生も研究チームに加わり、研究補佐員の研究従事時間も増える事から、より進行が促進される事が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在ErbB4のリガンドであるNeuregulin投与によりPOMC発現、ACTH分泌が調整されているのかを検討中である。さらに、AtT20マウスACTH産生腫瘍細胞株を用いてErbB4を強制発現、ノックダウンの実験においてPOMC発現、細胞増殖に影響があるかを現在検討中である。また、ErbB4は6つのアイソフォームが知られており、腫瘍特異的に発現するアイソフォームが異なる事も知られていることから、現在ヒトACTH産生下垂体腫瘍におけるErbB4のアイソフォームについても検討中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
文具が予想外に低価格にて購入可能となったため。 次年度の消耗品などの購入時の補てん分として、大切に使用させて頂きたいと考えております。
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