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2012 年度 実施状況報告書

間脳下垂体機能障害による卵巣機能への影響とその分子機序の検討

研究課題

研究課題/領域番号 24790946
研究機関岡山大学

研究代表者

中村 絵里  岡山大学, 大学病院, 医員 (30612634)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード卵巣 / 下垂体 / 生殖内分泌
研究概要

卵胞の正常な発育は、下垂体FSH/LHと卵胞に発現するFSH/LH受容体シグナルを軸に制御される。プロラクチン(PRL)や成長ホルモン(GH)などの下垂体ホルモン分泌異常では、卵巣機能障害や不妊症などの生殖内分泌機能への影響が認められるが、FSH/LH分泌能の低下とPRL/GHによる直接的な卵胞への影響も示唆される。間脳・下垂体障害をもつ女性では、FSH/LH分泌障害による排卵機能の低下や卵巣ホルモンの低下に加えて、PRL/GHの分泌異常により妊孕能の低下や不妊をきたす。今年度の研究では、下垂体移行性薬剤としてソマトスタチン(SS)アナログによる卵巣機能への影響を検討した。SS受容体(SSTR)のうち、SSTR-2/-5が齧歯動物の卵胞にも発現し、顆粒膜細胞・卵母細胞に分布する。我々は未成熟雌ラットから単離した卵巣顆粒膜細胞の初代培養系において、SOM230とOctreotide(OCT)を用いて、卵胞ステロイド産生への影響について卵胞成長因子BMPとの関係に着目し検討した。SS-analogは、卵母細胞の有無に関わらずFSH誘導性のEstradiol (E2)とProgesterone(P4)の産生を抑制したが、BMP作用を中和する Noggin存在下では、SS-analogによるP4産生とcAMP抑制が減弱することから、SS-analogの作用機序に内因性BMPの関与が示された。SS-analogはBMPの標的遺伝子であるId-1の発現を増強し、BMPの抑制性Smad6/7の発現を減弱することで、卵胞BMPシグナルを増強して卵胞ステロイド産生を制御していると考えられた。今後研究を進め、視床下部・下垂体疾患に伴うPRLとGHの分泌異常と治療が、妊孕性や卵巣機能にどの程度影響を与えるか?治療としてPRL/GHをどの程度抑制すべきか?という問題解決に繋がるものと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度の計画は、PRLによる生殖内分泌機能への影響の解明であった。ラット初代培養顆粒膜細胞を用いて、各BMPリガンド刺激下におけるPRL受容体シグナル(JAK/STAT、MAPKなど)の変調、BMP受容体システムとしてType-I受容体(ALK-1,2,3,4,5,6,7)、Type-II受容体(ActRIIA, ActRIIB, BMPRII, AMHRII, TβRII)の発現レベルの変化、Smad1/5/8リン酸化シグナルの変化、抑制性Smad6/7発現レベルの変化について評価した。BMPシステム分子の卵胞における発現パターンの変化を追跡し、ステロイド分泌能、BMP/PRL受容体のシグナル連関について探究した。また卵巣細胞を用いた検討により新たに論文として発表することができた。

今後の研究の推進方策

引き続き、研究計画に従って研究を進めていく。次年度の計画は、GHによる生殖内分泌機能への影響の解明である。特に 卵胞内IGF-I作用とGHに着目した卵胞発育への影響とそのメカニズムの検討を行う。GHによる卵胞での作用を考える上で、GHはその受容体を卵母細胞(oocyte)にも強く発現することから、卵巣の培養細胞を用いるうえで、oocyteの存在を考慮した培養条件を設定する。GH/IGF-IによるBMP-Smadシグナルへの影響をWestern blotとBMP/Smad-reporter assayにより検討する。また、GHの卵胞機能への作用が卵胞に発現するIGF-I作用を介するか否かを検討するために、内因性IGF-Iを中和抗体で抑制してこれらの検討を再評価する。さらに、成熟雌ラットを用いてGH/IGF-Iの抑制モデル(GH受容体拮抗薬投与モデル・IGF-I中和抗体投与モデル)を作成し、排卵への影響・卵胞BMP発現の変化・E2/P4分泌能への影響を評価し、GH/IGF-Iによる生殖内分泌系へのin vivoの影響とBMPシステムとの相互作用について検討する予定である。

次年度の研究費の使用計画

継続研究の実験のための材料・消耗品の他、学会出張に利用する。また実験室の移転のため、使用が若干遅れたために、172,520円の残金が生じたが、今年からはこの残金分を研究材料費に含めて使用する予定である。使用目的としては、実験用動物やプラスチック類(ディッシュ・プレート・チューブ)や核酸実験薬(酵素)、蛋白実験試薬(抗体や酵素類)培養試薬(培地類)の購入に使用する予定とする。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Estrogen facilitates osteoblast differentiation by upregulating bone morphogenetic protein-4 signaling.2013

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Y, Otsuka F, Takano-Narazaki M, Katsuyama T, Nakamura E, Tsukamoto N, Inagaki K, Sada KE, Makino H.
    • 雑誌名

      Steroids.

      巻: 78 ページ: 513-20

    • DOI

      10.1016/j.steroids.2013.02.011.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Involvement of bone morphogenetic protein activity in somatostatin actions on ovarian steroidogenesis.2013

    • 著者名/発表者名
      Nakamura E, Otsuka F, Inagaki K, Tsukamoto N, Ogura-Ochi K, Miyoshi T, Toma K, Takeda M, Makino H.
    • 雑誌名

      J Steroid Biochem Mol Biol.

      巻: 134 ページ: 67-74

    • DOI

      10.1016/j.jsbmb.2012.10.018.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] An in vivo role of bone morphogenetic protein-6 in aldosterone production by rat adrenal gland.2013

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Y, Otsuka F, Inagaki K, Tsukamoto N, Takano-Narazaki M, Miyoshi T, Nakamura E, Ogura-Ochi K, Takeda M, Makino H.
    • 雑誌名

      J Steroid Biochem Mol Biol.

      巻: 132 ページ: 8-14

    • DOI

      10.1016/j.jsbmb.2012.04.004.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Regulatory role of kit ligand-c-kit interaction and oocyte factors in steroidogenesis by rat granulosa cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Miyoshi T, Otsuka F, Nakamura E, Inagaki K, Ogura-Ochi K, Tsukamoto N, Takeda M, Makino H.
    • 雑誌名

      Mol Cell Endocrinol.

      巻: 358 ページ: 18-26

    • DOI

      10.1016/j.mce.2012.02.011.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Enhanced expression of bone morphogenetic protein system in aldosterone-treated mouse kidneys.2012

    • 著者名/発表者名
      Suzuki J, Otsuka F, Matsumoto Y, Inagaki K, Miyoshi T, Takeda M, Tsukamoto N, Nakamura E, Ogura K, Makino H.
    • 雑誌名

      Hypertens Res.

      巻: 35 ページ: 312-317

    • DOI

      10.1038/hr.2011.186.

    • 査読あり
  • [学会発表] 卵母細胞―顆粒膜細胞間のKL/c-kitおよびGRKによる新たなEstorogen調節系2012

    • 著者名/発表者名
      三好智子, 大塚文男, 中村絵里, 稲垣兼一, 槇野博史
    • 学会等名
      第17回日本生殖内分泌学会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20121208-20121208
  • [学会発表] BMPによる骨芽細胞分化に対するエストロゲン作用の検討2012

    • 著者名/発表者名
      大塚文男, 楢崎真理子, 松本佳則, 勝山隆行, 中村絵里, 槇野博史
    • 学会等名
      第20回日本ステロイドホルモン学会
    • 発表場所
      金沢
    • 年月日
      20121118-20121118
  • [学会発表] Effects of BMP-6 on Aldosterone Production by Rat Adrenal Gland In Vivo2012

    • 著者名/発表者名
      Miyoshi T, Otsuka F, Matsumoto Y, Inagaki K, Tsukamoto N, Nakamura E, Takano M, Ochi K, Takeda M, Makino H
    • 学会等名
      THE ENDOCRINE SOCIETY’S 94th ANNUAL MEETING
    • 発表場所
      Houston, TX, USA
    • 年月日
      20120623-20120626
  • [学会発表] Regulatory Role of Melatonin and BMP-4 in Prolactin Secretion by Rat Pituitary Lactotrope Cells2012

    • 著者名/発表者名
      Ochi K, Otsuka F, Tsukamoto N, Miyoshi T, Nakamura E, Takeda M, Inagaki K, Ogura T, Iwasaki Y, Makino H
    • 学会等名
      THE ENDOCRINE SOCIETY’S 94th ANNUAL MEETING
    • 発表場所
      Houston, TX, USA
    • 年月日
      20120623-20120626
  • [学会発表] Kit Iigand-c-kit interaction regulates estradiol production by rat granulose cells via oocyte factors2012

    • 著者名/発表者名
      Miyoshi T, Otsuka F, Nakamura E, Inagaki K, Makino H
    • 学会等名
      15th INTERNATIONAL AND 14th EUROREAN CONGRESS OF ENDOCRINOLOGY
    • 発表場所
      Florence, Italy
    • 年月日
      20120505-20120509
  • [学会発表] ソマトスタチアンアナログの卵巣ステロイド産生への影響と卵胞BMPシステムの関与2012

    • 著者名/発表者名
      中村絵里, 大塚文男, 稲垣兼一, 三好智子, 塚本尚子, 武田昌也, 越智可奈子, 当真貴志雄, 槇野博史
    • 学会等名
      第17回日本生殖内分泌学会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2012-12-08

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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