研究課題
卵巣における正常な卵発育には、視床下部・下垂体などの上位内分泌器官での神経内分泌系の統御機構と、卵巣の機能ユニットである卵胞の発育・分化、排卵までの一連の生理現象が正常に生じることが必要である。下垂体腫瘍・頭蓋内炎症・外傷など様々な病因で生じる成長ホルモン(growth hormone: GH)分泌異常では、GHの分泌過剰・低下ともに排卵機能や妊孕性の低下をもたらすがその詳細な機序は不明である。GH・IGF-Iが卵胞機能に与える影響について、卵胞に発現するBMPとの関係に着目して検討した。顆粒膜細胞へのGH添加によりFSHにより誘導されたMAPKシグナルの活性化が増強し、Estradiol(E2)産生系が抑制され、Progesterone(P4)産生系が促進した。GHはJAK/STAT経路を介して顆粒膜細胞のIGF-Iの発現を誘導したが、内因性のIGF-Iを中和するとGHによるP4分泌への影響は抑制された。すなわちFSHによるP4産生がGHにより増幅される機序には、顆粒膜細胞由来のIGF-I発現の増強が関与する。またソマトスタチンアナログの場合は、BMP結合蛋白Nogginによってその作用が減弱するのに対し、GHによる卵胞ステロイドの分泌調節は、BMP作用に干渉するNogginの存在下で増幅され、BMPリガンドの処理によりGHおよびIGF-I受容体とIGF-Iの発現が減弱し、IGF-I作用は抑制された。現在、下垂体機能におけるリズム変動を調整する松果体ホルモン・メラトニンの役割との関連についてさらに検討を進めている。本研究から、GHはゴナドトロピンと協調して卵胞成長を支持するが、卵巣ではIGF-IとBMP分子間の拮抗作用を通じて、卵胞ステロイド分泌能の恒常性を維持するという新たなメカニズムが明らかとなった。
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