本研究では、糖質コルチコイド過剰に伴う肥満・過食形成の分子機序を解明するために、レプチン・CRHダブルノックアウトマウス(DKOマウス)を用いて解析を行った。その結果、ob/obマウスにおける過食・肥満の形成には糖質コルチコイド過剰および視床下部AgRP(摂食促進ペプチド)の発現誘導が必要であることが明らかにされた。さらにin vitro系を用いた解析により、糖質コルチコイドはAgRPプロモーター領域にあるGR(グルココルチコイド受容体)結合配列を介して、AgRP転写を誘導することが明らかにされた。 一方、レドックス制御に関わるチオレドキシン相互作用蛋白(TXNIP)が食欲や耐糖能制御に関わることが報告されている。TXNIPは糖質コルチコイドにより発現誘導されるとの報告もあり、糖質コルチコイド過剰による肥満・耐糖能障害の惹起に関与する可能性も考えられる。そこで今回、糖質コルチコイド過剰に伴う肥満・過食形成の分子機序としてTXNIPの関与を明らかにするために実験を追加した。その結果、糖質コルチコイド持続投与により視床下部TXNIP発現の増加が認められ、in vitro系を用いた解析により、糖質コルチコイドはTXNIPプロモーター領域にあるGR結合配列を介して、TXNIP転写を誘導することが明らかにされた。 申請者は「視床下部Agouti関連蛋白のクッシング症候群における役割の解明」の題目で平成27年度より科研費(若手研究B)を取得している。今後はAgRPノックアウトマウスを用いて、クッシング症候群におけるAgRPの役割および糖質コルチコイドの視床下部標的遺伝子につき明らかにしていきたい。
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