研究概要 |
平成24年度は,病的刺激による血圧調節における腎尿細管ATRAPの機能的意義に着目し,gain-of-function in vivo strategyにより,腎尿細管ATRAP高発現による高血圧抑制効果について検討した。 申請者は,腎尿細管ATRAP高発現トランスジェニックマウス(ATRAP-TGマウス)を作製し,野生型C57BL/6マウス(WTマウス)およびATRAP-TGマウスにosmotic pumpを用いてアンジオテンシンII(Ang II)を持続皮下投与し, 負荷前とAng II負荷期間における血圧および脈拍をradiotelemetry法で測定した.AngII投与期間中,metabolic cageを用いて, 体重, 食餌摂取量, 飲水量,尿量およびナトリウム排泄量を計測し, また各々の腎臓における電解質トランスポーターの発現をRT-PCR法およびwestern blot法で評価した. その結果,ATRAP-TGマウスでは,負荷前ではWTマウスと比較して血圧,脈拍に有意差を認めなかったが,Ang II負荷開始後には, WTマウスと比較して,ナトリウムバランスの低下とともに血圧上昇の抑制がみられた. さらに,腎での電解質トランスポーター発現は, WTマウスと比較して,ATRAP-TGマウスではAng II負荷によるNCCのリン酸化とENaC発現増加が抑制された. 以上より,腎尿細管におけるATRAP高発現は,生理的なAT1受容体情報伝達系活性には影響を与えずに,病的刺激下に生じるAT1受容体系の過剰活性化を抑制し,腎尿細管電解質トランスポーター/尿中ナトリウム排泄系の制御を通じて高血圧の発症を抑制している可能性が明らかにされた.
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