研究課題/領域番号 |
24790951
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
川島 晃 自治医科大学, 医学部, ポスト・ドクター (60624913)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 内分泌代謝疾患 / インフラマソーム / プロテオミクス / 分子間相互作用 |
研究概要 |
平成24年度は、インフラマソーム構成分子ASCを介した細胞内炎症反応制御機構を明らかにする為に、細胞中のASC複合体の単離精製を行った。 具体的には、まずASCにタグを付けたタンパクをヒト単球系の細胞株THP-1に発現させる為にレンチウイルスを使った発現系の構築を行った。次に、タグに対する抗体を使った免疫沈降法により、ASC複合体を精製し、その複合体の構成タンパクの単離を行おうとした。しかしながら、ASC複合体は、分子量が700kDa以上の巨大なタンパク複合体を形成するため、遠心を使った分離法において不溶画分に大部分が残ってしまい、今後の解析に必要な量の精製が出来なかった。そこで、グリセロール濃度勾配遠心法を使い、ASC複合体の分離を行った。現在この分離法によりASC複合体を精製し、銀染色やMS解析によりASC複合体の構成分子について明らかにしていく予定である。 また、ASCの細胞内の局在やインフラマソーム複合体の形成をライブイメージングで観察する為に、GFPとASCの融合タンパクを作った。それによって、ASCタンパクが、未活性化状態では細胞質中に拡散しているが、刺激を行うと核膜辺縁部に固まりを形成することを明らかにした。また細胞質中と核内に存在しており、核内のASCがどのようにインフラマソーム活性化に関与しているか現在解析中である。 インフラマソーム構成分子ノックアウトマウス研究により、未知の活性化経路の存在が示されて来た。更に、細胞内の挙動や局在がインフラマソームの活性化に重要であると考えられている。ASC結合分子の解析は、インフラマソームに関する未知の活性化経路を明らかにするとともに、ASC分子の挙動を仲介する分子を明らかにする事が出来ると考えている。それによりインフラマソームが関連する疾患の治療法や予防法の開発に繋がることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本来の予定では、平成24年度の内にASC複合体の構成分子に対するTOF-MSを使った解析を行う予定であった。しかしながら、ASC複合体は巨大分子であり、免疫沈降を用いた精製法ではうまく分離する事が出来なかった。大部分が不溶画分に存在しており、従来の免疫沈降法でTOF-MS解析を行うレベルに精製する事が出来なかった。結果として、当初予定していたASC結合分子の同定までは至らなかった。 現在、ASC複合体が巨大分子であることを利用し、グリセロール濃度勾配やゲル濾過クロマトグラフィーを用いて分子の大きさで分ける事によって、ASC複合体を精製している。
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今後の研究の推進方策 |
単離したASC複合体構成分子の解析をTOF-MS解析によって行う。同定された結合分子の解析の為、発現ベクターやsiRNAを用いた発現調節を行い、インフラマソームの活性化やその他の自然免疫活性化経路についてどのような影響があるか評価する。それらの解析によって有力な候補分子に対して、細胞内の挙動を明らかにするために蛍光タンパクとの融合タンパクを作る。また、ASCとの結合部分を明らかにする為に、ASCのアミノ酸変異体を作製する。これらの実験によりASC結合分子の同定、機能の解析を行おうと考えている。また、内分泌代謝疾患において重要な機能を果たす可能性があれば、今後ノックアウトマウスの作製を検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、前年度に引き続き細胞株を用いたASC複合体の構成分子の探索及び機能解析を行う。研究費の使用項目は、研究計画の目的に即して3つに分ける。 1つ目はASC複合体の単離・解析の為に研究費を使用する。具体的には、タンパクの解析の為のバッファーや試薬類の購入に充てる。また、LC-MS/MSの解析は、他研究室の機器を借りて行うため、年間使用量などの支払いを行う。 2つ目は、構成分子の機能解析の為に、研究費を使用する。具体的には、標的分子に対する抗体やPCR法を用いた発現解析、siRNAや発現ベクターを用いた機能解析などを行う予定である。 3つめは、分子の探索・機能解析によって得られた結果をマウス病態モデルなどにおいて、どのような働きを持つか解析する。その為、研究費の一部をマウスの購入費や飼育費等に使う。 上記の1、2の実験計画では、共に細胞株を用いた実験を計画している。その為、培養用のバッファーやプラスチック製品の購入を計画している。
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