本研究課題は、炎症経路の一つであるインフラマソームの作用機序を明らかにすることによって、炎症の関与する内分泌代謝疾患に対する新規治療薬や予防法の解明に繋がる知見を得ること目的としている。 インフラマソーム活性化機構の解明を行なうため、分子複合体インフラマソーム自身を単離し、質量分析を行なった結果、新規結合分子の候補を得た。候補分子のひとつにユビキチン修飾に関与するE3ユビキチンリガーゼがあり、その分子Xに着目して研究を行った。(未発表データの為、分子Xとする) 1.ヒト胎児由来腎臓細胞293T細胞株を用いた分子Xの強制発現系を作成し、免疫沈降法によりインフラマソーム構成分子の一つとの特異的に結合、ユビキチン化を誘導することを明らかにした。更に結合ドメインの同定を行なった。 2.白血病ヒト由来単球細胞株THP-1に対して、レンチウイルスを用いて分子Xの強制発現系と遺伝子欠損株を作成し、解析を行なった。遺伝子欠損株では、ユビキチン化の標的となるインフラマソーム構成分子がタンパクレベルで増強し、強制発現株では減少した。ユビキチンの標的分子は遺伝子レベルでは差が無いが、タンパクレベルで差があるため、ユビキチン修飾によるタンパク分解を介した調節が行なわれていると考えている。ATPやナノシリカによるインフラマソーム刺激に対して、候補分子の遺伝子欠損株ではサイトカインの分泌が上昇する。この結果より分子Xはユビキチン修飾を介したインフラマソーム構成分子の分解によりインフラマソームの活性化に抑制的に働くことを明らかにした。 以上の結果をより詳細に解析し、論文に投稿するための準備をしている。
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