研究課題/領域番号 |
24790952
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
栗原 勲 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90338038)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ミネラルコルチコイド受容体 / O-GlcNAc修飾 / 糖尿病 / アルドステロン / 高血圧 |
研究概要 |
1) MRのO-GlcNAc修飾の検出と修飾残基の同定: 免疫共沈降法によりFlag-MR蛋白を精製し、in vitroでのOGT反応生成物を質量分析法(LC-MS/MS)にて解析した。この結果、MRの295-307アミノ酸のO-GlcNAc修飾が示された。O-GlcNAc修飾の標的となるのはセリン、スレオニン残基であるため、この領域内に含まれるセリン残基をアラニンに置換した変異体を作成し、そのO-GlcNAc修飾レベルを評価した。S295A MR, S298A MR, S299A MRでO-GlcNAc修飾の減少を認め、この3残基がO-GlcNAc修飾であることが示唆された。これらの変異体では蛋白発現量の減少を認めるとともに、転写活性が野生型の20-60%に低下していた。以上より、上記3残基のO-GlcNAc修飾がMRの蛋白安定化に関わり、MRの転写活性を正の方向に調節していることが示された。 2) 2型糖尿病モデルでの検討: 9週齢のdb/dbマウス、対照群のdb/+マウスについて、腎、大腸組織におけるMR蛋白発現量、O-GlcNAcレベル、MR標的遺伝子のmRNA量を検討した。db/db群ではMRの標的遺伝子であるSGK1のmRNAが有意に増加しており、腎組織のO-GlcNAcレベルの増加とともにMR蛋白発現量が対照群の2.5倍に増加していた。MRのmRNAレベルは両群で差がなく、MRの発現量が蛋白レベルで調節されていることが示唆された。 以上1,2の結果から、MRのO-GlcNAc修飾がその転写活性の制御に重要な役割を果たすことがin vitroおよびin vivoにおいて示された。糖尿病において、O-GlcNAc修飾の増加によりMR蛋白が安定化し、アルドステロン感受性が亢進していることが推測されるが、in vivoでのさらなる検討が必要であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
モデル動物(db/dbマウス)を用いた実験については当初の計画では平成25年度に予定していたが、平成24年度内に実施することができ、上記の結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって、db/dbマウス腎組織でのMR発現量増加が示された。糖尿病モデル動物を使用した研究成果は、臨床への還元性を考えた上では、非常に重要な意義を持つ一方、O-GlcNA修飾を介した作用以外の、高血糖に伴う複数の要素が関与している可能性が高い。このため、O-GlcNAc修飾に特異的なMR機能をみる工夫として、組織特異的なO-GlcNAc transferase(OGT)のトランスジェニックマウス作成に着手している。さらに、in vitroの系では、MRのO-GlcNAc修飾がMRの蛋白発現量を変化させる機序をさらに追究するために、高血糖下や各種試薬処置時におけるMRのユビキチン化の検討などを行っていく。以上の結果を論文として発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
組織特異的OGTトランスジェニックマウスの作成および解析に必要な飼育料、試薬購入費。また、細胞実験に必要な培地、試薬購入費。
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