研究課題
移植片対宿主病(GVHD)は早期診断に苦慮することが多い。申請者は、GVHDの早期診断に最適なバイオマーカーを見出す過程でNotch分子に着目した。移植後にGVHD標的臓器上のNotchリガンドを介してエフェクターT細胞が活性化され、GVHD発症に関与するという仮説を立て、これを証明するための研究を遂行した。 (株)三菱化学メディエンスとの共同研究として、筑波大学附属病院における同種造血幹細胞移植患者血球上のNotch分子の発現を、大規模かつ網羅的にフローサイトメトリーで解析できるシステムを構築した。このシステムによりCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、NK細胞に分けてNotch分子各サブタイプの発現を解析した。移植後患者末梢血590検体を解析した結果、当初の予想に反して、CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞にNotch分子の発現を認めなかった。しかしCD56陽性NK細胞上にNotch1 分子の発現を認め、その発現強度は臍帯血移植症例のNK細胞で、他の移植片(骨髄、末梢血幹細胞)と比較して有意に強かった。また全検体でNotch2、Notch3分子の発現を認めなかった。NK細胞上のNotch1の発現とGVHDの発症に相関を認めなかったが、驚くべきことにNotch1高発現群にて移植後の再発が有意に抑制された。これまで、Notch分子を介してNK細胞の分化・増殖、および細胞障害活性が促進されることが報告されていることから、造血幹細胞移植後も同様の機序にてNotch分子によるNK細胞の活性化が再発抑制に寄与しているものと考えられた。また将来的には、移植後にNotch1分子を制御することにより、GVHDを増加させることなく移植片対白血病(GVL)効果を促進させられる可能性が見出された。
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