研究課題/領域番号 |
24790966
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
長尾 俊景 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (10622798)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 造血器腫瘍 |
研究概要 |
白血病発症と進展に関与するJak2-V617F、 Flt3-ITD等の恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体が、キナーゼ阻害薬による活性抑制と抗癌剤誘導性のDNA損傷ストレス下に、ユビキチン/プロテアソーム系(UPS)やカスパーゼによる分解を受ける分子機構の詳細を明らかにすべく検討を行い、まずFlt3-ITDに関してsorafenibにより活性を阻害しetoposideにて処理することにより55-60kDaの切断片を生じる事を見いだした。また、同様の現象はPI3K阻害薬GDC-0942の処理にても生じ、PI3K/Akt経路の活性化によりFlt3-ITDの分解が負に制御されている事が判明した。多発性骨髄腫等の治療に用いられるproteasome阻害薬bortezomibによっても、Flt3-ITDはカスパーゼの活性化と供に同様の分解を受ける事が明らかとなり、この分解機構はUPSではなくカスパーゼの活性化を介して生じるものと考えられる。Jak2-V617Fの白血細胞における分解機構を詳細に検討する目的で、真性多血症から急性骨髄性白血病に転化した症例の検体からJak2-V617F依存性に増殖する細胞株PV-T1を樹立し、SrcファミリーのLynがJak2と供に恒常的に活性化していることを見いだした。これらの結果は、Flt3-ITDの細胞内分解機構解明へ向けて貢献しうる意義を有するのみでなく、既に臨床応用されていたり臨床開発中の阻害薬を用いた結果であることから、治療抵抗性急性骨髄性白血病に対する新規治療法の開発へもつながる重要な意義を有する。また、新規に樹立したPV-T1細胞株はJak2-V617の細胞内分解機構やシグナル伝達機構の解析のみでなく、Jak2-V617F陽性骨髄増殖腫瘍から急性骨髄性白血病への進展機構解明の為の研究にも役立ちうる意義を有する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急性骨髄性白血病の治療抵抗性の最も重要な要因であるFlt3-ITDが、抗癌剤誘導性のDNA損傷ストレスやproteasome阻害薬処理による細胞ストレス化にカスパーゼによる分解を受け、これをPI3K/Akt経路の活性化を介して負に制御する分子機構を見いだした事により、白血病発症と進展に関与するJak2-V617F、 Flt3-ITD、 BCR/ABL等の恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体が、キナーゼ阻害薬(TKI)による活性抑制と抗癌剤誘導性のDNA損傷ストレス下に、ユビキチン/プロテアソーム系(UPS)やカスパーゼによる分解を受ける分子機構の詳細を明らかにするとの目標の一部を達成する事が出来た。また、新規にJak2-V617F依存性の白血病細胞株を樹立することが出来た事も、今後のJak2-V617Fの分解機構の詳細解明との目標達成に向けて研究を発展させる上での着実な成果である
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今後の研究の推進方策 |
今後更に抗癌剤とチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)存在下でのJak2-V617F、 Flt3-ITDおよびBCR/ABLのユビキチン/プロテアソーム系(UPS)での分解機構に関して、GSK3ß、Cbls、HSP90および脱ユビキチン化酵素(DUB)の阻害薬や変異体またはノックダウン法を用いた抑制の効果を臨床検体を含めた造血細胞系でin vivoの効果も含めて検討し、治療抵抗性獲得機構における役割と治療応用の可能性を評価すし、ユビキチン化の様式と関与するリガーゼを同定しその意義を明らかにする。また、カスパーゼによる切断分解機構に関して、293T細胞での一過性発現系で一連のカスパーゼおよびその変異体との供発現により関与するカスパーゼを同定し、MALDI-TOFMSを用いて切断部位を同定し、さらに切断部位を改変し切断不能とした変異体および切断片に対応する変異体を作成し造血細胞系細胞に発現させ、相乗的アポトーシス誘導機構における意義を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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