研究課題
血液細胞上には、父方と母方由来のHLAが発現されているが、特発性再生不良性貧血患者(AA)の約15%では、父方または母方のどちらかのHLA発現を欠失した白血球が存在する。この現象は、HLA領域を含む6番染色体にloss of heterogeneity, (LOH)を起こした造血幹細胞が、T細胞の攻撃を免れて造血を支持するようになったためと考えられた(Katagiri T. et al. Blood. 2011)。このHLA欠失を認める細胞の割合が、幹細胞の分化段階により異なることを利用して、ヒト造血幹細胞の増殖を調節している分子を同定し、同時にAAにおいて細胞傷害性T細胞の標的となる自己抗原の同定に取り組んだ。6pLOHがどの段階の幹細胞で起こっているかを明らかにするため、骨髄CD34陽性細胞を common myeloid progenitor (CMP), granulocytic macrophage progenitor (GMP), megakaryo-erythroid progenitor (MEP)に分けて、HLA欠失細胞の割合をみた結果、GMPとMEPにおけるHLA欠失細胞の割合は、末梢血の単球、顆粒球とほぼ同じ割合であったのに対して、GMPとMEPの前駆細胞のCMPにおいては、HLA欠失細胞の割合が明らかに低下していた。マイクロアレイ解析の結果、CMPにおけるHLAの欠失分画では、増殖を促進する「CXCL12」の発現が約30倍亢進していた。さらに、このCXCL12のレセプターであるCXCR4の発現が、HLA欠失側でのみ低下していた。その発現がHLA欠失側で低下していることにより、セルサイクルが促進されず、CMPにおいてはHLA欠失分画の割合が著しく低下していることを明らかにした。これは,特定のサイトカインとそのレセプターの発現が分化および増殖を決定することを示した意義のあるものである
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STEM CELLS
巻: 31 ページ: 536-546