研究課題/領域番号 |
24790969
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
寺倉 精太郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (40625141)
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キーワード | キメラ抗原レセプター / 遺伝子導入T細胞療法 / CD8陽性 / Tリンパ球 |
研究概要 |
1.同種の細胞を用いた系における改良:(1) 日本人に頻度の高いHLAに提示されるCMV/EBVエピトープの同定とそれらを用いたBi-specific T細胞の作成を引き続き行った。CMV特異的T細胞に比べてEBV特異的T細胞は増幅しづらいことが分かった。CMV特異的細胞は増幅しやすいものの、CMV陽性ドナーの割合は日本人の60%程度とそれほど高くないため、新たなエピトープの同定あるいは新たな培養方法の樹立が必要であると考えられた。そのため、CMVの代表的な抗原であるIE-1およびpp65抗原を人工抗原提示細胞としてすでに有用性が示されつつあるK562細胞にHLAを遺伝子導入したものに、さらに遺伝子導入を行い、これを用いてCMV陽性ドナー末梢血を刺激し、ウイルス特異的T細胞を誘導することを試みた。予想に反して非特異的な反応が強く出現し、特異性の高いウイルス特異的なTリンパ球ラインは作成できなかった。(2) IL-15およびIL-21を用いたBi-specific T細胞の培養条件の至適化:IL-2に加えてIL-15およびIL-21を加えた培養系でBi-specific T細胞の培養を行い、IL-2+IL-21の培養系において有意に高い遺伝子導入効率を得ている。2.自家の細胞を用いた系における改良:我々の用いてきたChimeric antigen receptor (CAR)の細胞内ドメインはCD28のものを用いているが、近年臨床的有用性が報告されている4-1BBやCD27を用いて更なるシグナル伝達の効率化を検討した。これまでのCD28細胞内ドメインに替えて、4-1BBやCD27の細胞内ドメインを合成し、4-1BBやCD27の細胞内ドメインを持つウイルスベクターを作成した。これらのCARによるシグナル伝達・サイトカイン放出・抗原特異的刺激後の分裂を今後比較検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.同種の細胞を用いた系における改良 (ア)日本人に多いHLA型とそのCMV・EBV特異的エヒピトープを認識するT細胞に対してCD19-CARを遺伝子導入し、Bi-specific T細胞を樹立できるかを検討する。:実績欄に示したように、HLAを遺伝子導入したK562細胞を人工抗原提示細胞として用いる系に、さらにCMV抗原を遺伝子導入することによって効率よくCMV特異的T細胞ラインを作成できるのではないかと考え、試みたがうまく行かなかった。人工抗原提示細胞は、T細胞を刺激する前に固定した方が良いとする報告に基づいてこれも試みたが、特に固定前と固定後で抗原特異的T細胞の誘導効率は変わらなかった。これらによって進捗はやや遅れている。現在特異的細胞をより効率よく増幅するため、overlapping peptideを用いた培養系について検討している。(イ)培養方法の改良。:これについてはおおむね予定通り進捗している。2.自家の細胞を用いた系における改良 (ア)新規抗原に対するCARの作成;現在ひとつの新規抗原に対するCARの作成を進めている。同時にCD19-CARの細胞内ドメインの至適化を行っている。手持ちのCD19-CARの 細胞内ドメインの至適化とその評価を行い、平行して新規抗原に対するCARの作成を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1.同種の細胞を用いた系における改良 (ア)日本人に多いHLA型とそのCMV・EBV特異的エピトープを認識するT細胞に対してCD19-CARを遺伝子導入し、Bi-specific T細胞を樹立できるかを検討:ウイルス特異的細胞をより効率よく増幅するための培養系について検討している。具体的にはoverlapping peptideを用いて、これまでのペプチドよりも効率よくウイルス特異的細胞を増幅することが出来るか検討する予定にしている。すでにpp65およびIE-1のoverlapping peptideを入手し、これを用いて高効率にCMV特異的T細胞を誘導できるかどうか検討する。これまでに樹立したIL-15/IL-21を用いた培養系との組み合わせについても検討する。2.自家の細胞を用いた系における改良 (ア)新規抗原に対するCARの作成: CD19-CARの細胞内ドメインの至適化のため、細胞内ドメインを4-1BBおよびCD27に変更したCARを作成し、その伝達するシグナルを評価する。それと平行して、それらの系を用いて新規抗原に対するCARの作成について進める予定にしている。すでに抗原の選定は行い、CD28の細胞内ドメインをもつCARの作成を始めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に比べて、試薬の残余があったため、予定より支出が少なかったため残金が生じた。当該年度には遺伝子合成などは行わなかったことも、残金が生じる原因となった。 本年度にはベクター作成のための遺伝子合成の依頼なども予定しており、相当額が必要となる予定である。また、残余試薬があったものも消費してきており、再度購入が必要となる見込みである。
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