研究課題
難治性慢性GVHDにおける制御性T細胞(Treg)の恒常性異常を標的とする低用量IL-2療法は、Tregを体内増幅させ、GVHDの臨床症状を改善させることを報告したが、この治療法によるTreg増幅効果をより患者個別的で効果的とするための免疫的基盤は不明であった。今回の研究で、まず米国臨床試験の患者検体の解析から、IL-2療法は、Tregの末梢分裂の駆動、胸腺新生の促進、抗アポトーシス活性の亢進といった複数の機序に作用するものの、これらの協働には、Treg系列の恒常性維持の起点となる胸腺新生分画の安定した供給が特に重要であることが示唆された。これを実験的に検証するため、B6 into B6D2F1の骨髄移植系を利用して、マウス低用量IL-2療法モデルを作成した。移植後のリンパ球減少環境駆動性分裂による疲弊が見られるグラフト由来成熟TregはIL-2投与による増幅は限定的であったが、この一方、胸腺より新生したTregはIL-2投与によって抗アポトーシス活性を保持したまま活発な分裂を示した。これらの結果から、IL-2療法による効果的な寛容効果を得るためには、残存胸腺機能をはじめとする免疫モニタリングによってIL-2の至適投与量や投与タイミングを調整することが必要と考えられた。低用量IL-2療法の国内臨床試験開始に向けて、現在本邦にて承認されている遺伝子改変IL-2製剤であるテセロイキンと、米国での臨床試験で使用したIL-2製剤であるアルデスロイキンの生理活性を、CTLL-2基準細胞株の増殖、マウスT細胞のSTAT5リン酸化や分裂などの系により、比較検討した。このいずれの評価系においても、テセロイキンはアルデスロイキンの5~10倍前後の力価を持つことが示され、予定している国内臨床試験へ向けての基礎データが得られた。近くテセロイキンを用いた低用量IL-2療法の開始を予定している。
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