研究概要 |
1) ヒト造血幹細胞(HSC)支持因子受容体を同定するため、HSC支持因子受容体に対する阻害抗体の作製を試みた。具体的には、ヒトHSCが高度に濃縮されたヒト臍帯血由来18Lin-CD34+/-分画細胞あるいはヒト白血病細胞株であるKG-1細胞をBalb/cマウスに免疫することにより、18Lin-CD34+/-分画細胞の一部あるいは全部に反応性を示す抗体産生ハイブリドーマを約500クローン作製した。 2) 次いで、これらのハイブリドーマを自作の無血清培地に移し、その培養上清より抗体を精製した。その後、精製抗体をヒトHSC支持能を有するヒト骨髄Lin-CD271+SSEA-4+分画由来間葉系幹細胞(DP MSCと18Lin-CD34+/-細胞との共培養系に添加することにより、CD34+細胞維持・産生能を阻害する抗体のスクリーニングを行った。このスクリーニングは現在、50クローン分程度終えており、今後、残りのクローンにおいても同様のスクリーニングを行う予定である。 3) In vivoにおけるDP MSCのHSC支持能の検討を行った。具体的には、NOGマウス左脛骨に2 x 10^5/mouseのDP MSCと8,000/mouseの18Lin-CD34-細胞を骨髄内直接移植(IBMI)法にて同時に移植した。対照群には、18Lin-CD34-細胞単独で移植を行った。移植後20週目にマウスを犠牲死させ、移植部位におけるヒトCD45陽性細胞の生着率を解析した。その結果、18Lin-CD34-細胞単独で移植を行っても80%以上の非常に高いヒトCD45陽性細胞の生着を示すマウスが認められた。そのため、この系では、DP MSCによるSRC支持能を正確に評価することは困難であると考えられた。今後、新たなin vivoにおけるHSC支持能の評価系が必要である。
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