研究課題/領域番号 |
24790986
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
島 豊 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (90572298)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 白血病 / 核膜孔 |
研究概要 |
核膜孔構成因子が染色体転座のターゲットとなっている核膜孔関連白血病は予後不良である。当該年度期間、核膜孔関連白血病で見られるNUP98-HOXA9融合タンパク質を中心に研究を進めた。核膜孔タンパク質であるNUP98側に含まれるFG repeat domainが、NUP98-HOXA9の不死化能に重要であることは既に見いだしていたが、当該年度期間にこのFG repeat domainに結合し、NUP98-HOXA9による不死化能を協調的に調節しているタンパク質を探索した。不死化能を有するNUP98-HOXA9の野生型、変異体には結合し、不死化能を有さないFG repeat domainを欠損したNUP98-HOXA9変異体には結合しないタンパク質について、それぞれのタンパク質複合体を精製し、マススペクトロメトリーを用いて解析した結果、NUP98-HOXA9の不死化能に必須なFG repeat domainに結合するタンパク質を複数個同定した。これら結合タンパク質について、shRNAを用いた遺伝子ノックダウン実験で、また阻害剤があるものに関しては阻害剤も用いてNUP98-HOXA9のコロニー形成能に与える影響を調べた。その結果、結合タンパク質の一つであった代謝関連タンパク質を阻害するとNUP98-HOXA9のコロニー形成能が阻害されることが明らかとなった。興味深いこと他の白血病細胞や正常造血細胞に対してはこの代謝関連タンパク質を阻害してもコロニー形成阻害効果は見られなかった。この結果は、いまだ効果的な治療法がない予後不良な核膜孔関連白血病の治療ターゲットとして、この代謝関連因子が有用であることを示唆するデータである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずNUP98-HOXA9に関しては、当初の予定であった野生型NUP98-HOXA9複合体に含まれ、FG repeat domainを欠損した不死化能を有さないNUP98-HOXA9変異体複合体には含まれないタンパク質をマススペクトロメトリーで同定することを、当該年度期間に行い、実際に複数個のNUP98-HOXA9結合タンパク質を同定した。そして、shRNAを用いたこれらのタンパク質のノックダウン実験を行い、NUP98-HOXA9のreplating能を制御するタンパク質についても同定できたため、順調に研究が進展していると評価できる。 SET-CANに関しても、野生型SET-CAN複合体に含まれ、FG repeat domainを欠損したSET-CAN変異体複合体には含まれないタンパク質をマススペクトロメトリーで複数個同定した。ただし、現状SET-CAN単独では白血病発症を誘導できず、SET-CANの機能は転写因子PU.1を異常に活性化するin vitroの実験系でしかその活性を評価できないため、NUP98-HOXA9に関する研究を当該年度期間は優先的に進めた。しかしながら、SET-CAN複合体、NUP98-HOXA9複合体の二つに共通して含まれるタンパク質がいくつか同定され、異なる二つの核膜孔関連白血病の共通性を示唆するデータが得られたことは、核膜孔関連白血病の発症メカニズムを理解する上で重要であり、順調に研究が進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
NUP98-HOXA9の研究を優先的に進める。 そのために、まず平成24年度の研究で明らかとなったNUP98-HOXA9のreplating能の制御に重要な代謝関連因子について、なぜ代謝関連因子がNUP98-HOXA9の活性に関与するのか、NUP98-HOXA9によって白血病化した細胞の代謝をメタボローム解析で網羅的に調べ、その分子メカニズムについて検討する。また、その阻害が核膜孔関連白血病の治療につながるのか、NUP98-HOXA9以外のNUP98融合タンパク質についても検討し、さらにマウス移植実験を行い、in vivoでの阻害剤の効果を検証する。 並行して、DNA結合に対するFG repeat domainの重要性について、NUP98-HOXA9野生型と不死化能を有さないFG repeat domainを欠損したNUP98-HOXA9変異体のゲノム領域の結合を、クロマチン免疫沈降法 (ChIP)あるいはChIP-sequencing法で比較することで評価し、核膜孔関連白血病の発症に対するNUP98-HOXA9のゲノム領域への結合の重要性を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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