核膜孔構成因子が染色体転座のターゲットとなっている白血病で見られるNUP98-HOXA9融合タンパク質の機能解析を中心に研究を進めた。NUP98-HOXA9のNUP98側に含まれるフェニルアラニンとグリシンのリピート構造FG repeat domainがその不死化能に重要であることを前年度期間中明らかとしたが、当該最終年度にこのdomainが白血病発症に重要とされる遺伝子のあるゲノム領域の結合に必須であり、NUP98-HOXA9のFG repeat domainを欠損させるとそのゲノム領域への結合は阻害され、その結果白血病発症に重要な遺伝子の発現も誘導できず、不死化能も失うことが明らかとなった。NUP98は白血病において多くの遺伝子の融合パートナーとして選ばれるが、本研究の結果からNUP98側ののゲノム領域への結合能が、NUP98融合遺伝子の白血病発症能に重要であることが示唆された。 また、NUP98-HOXA9のFG repeat domainには代謝関連タンパク質が結合し、この活性を阻害するとNUP98-HOXA9によるマウス骨髄細胞のコロニー形成能が阻害されることを前年度期間中明らかとしていたが、当該最終年度にNUP98-DDX10によるマウス骨髄細胞のコロニー形成能もNUP98-HOXA9同様に阻害されることを明らかとした。一方で、正常の未分化な造血細胞によるコロニー形成や他の多くの融合遺伝子によるコロニー形成能はこの代謝関連タンパク質を抑制してもほとんど阻害されなかった。これらの結果から、予後不良な核膜孔関連白血病の治療ターゲットとしてこの代謝関連タンパク質が有用であることが示唆された。
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