研究課題/領域番号 |
24790988
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
近藤 裕也 筑波大学, 医学医療系, 講師 (40612487)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / CD4+ T細胞 / RORγt / T-bet / IL-17 |
研究概要 |
関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)の病態形成におけるCD4+ T細胞の分化および機能との関連を明らかにするために、各CD4+ T細胞subsetに分化する際に必須である転写因子に注目して、(1)自己免疫性関節炎動物モデルにおける解析、(2)レトロウイルスベクターを用いたT細胞分化制御機構の解析、(3)RA患者末梢血CD4+ T細胞における解析を実施した。 (1)CD4+ T細胞サブセットの一つであり、自己免疫病態との関連が注目されているTh-17の分化に重要な転写因子RORγtの発現が自己免疫性関節炎に与える影響を評価するために、野生型(Wild type;WT)およびRORγtトランスジェニックマウス(RORγt Tg)に対してコラーゲン誘導関節炎を誘導し、RORγt Tgマウスにおける関節炎の有意な抑制を確認した。in vitroにおける解析からは、RORγt Tgマウスにおいて抗原であるタイプIIコラーゲンに反応するTh-17分化が亢進を認めた。RORγt Tg由来のリンパ節細胞をWTマウスに移入することにより、WTの関節炎発症が抑制されることから、RORγt Tgマウスに関節炎に対して抑制的に働く細胞群が存在している可能性が示唆される。 (2)T細胞分化制御機構の解析においては、retrovirus vectorを用いたCD4+ T細胞へのT-bet、RORγtのトランスフェクションによって、分化制御メカニズムのより詳細な解析を行っている。 (3)RA患者末梢血における解析では、健常人と比較してCD4+ T細胞におけるIL-17およびRORγtの発現が亢進していることが確認され、さらにRAの疾患活動性指標であるDAS28と末梢血CD4+ T細胞におけるIL-17産生との間に有意な正の相関があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己免疫性関節炎動物モデルおよびRA患者の末梢血を用いた解析により、CD4+ T細胞の分化および機能と自己免疫性関節炎の病態形成との関連を明らかにし、さらにそれぞれの転写因子によるT細胞分化制御機構についてレトロウイルスベクターを用いた解析を実施することにより、病態の解析において得られた知見についてより詳細は評価を行っている。 自己免疫性関節炎の動物モデルを用いた解析においては、RORγt Tgマウスにおけるコラーゲン誘導関節炎の有意な抑制を確認しており、RORγt Tg由来のリンパ節細胞をWTマウスに移入することにより、WTの関節炎発症が抑制されることから、RORγt Tgマウスに関節炎に対して抑制的に働く細胞群が存在している可能性が示唆されており、現在この抑制細胞群を同定するための新たな細胞移入実験および機能解析を実施しており、RORγtの発現が病態形成に与える影響の詳細が明らかにされることが期待される。 RA患者末梢血における解析は、当初動物モデルの結果を踏まえて実施することを検討していたが、すでに解析を開始し、Th-17細胞とRAの発症および活動性との関連が示唆される結果が得られ始めており、今後の解析の継続により、より詳細な結果が得られることが期待される。 retrovirus vectorを用いた各転写因子のトランスフェクションによる分化制御メカニズム解析については、CD4+ T細胞に対するretorovirus vectorの感染効率が低いという問題があり、現在実験方法の検討を行っており、今後の解析が待たれる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
自己免疫性関節炎の動物モデルを用いた解析においては、RORγt Tgマウスに関節炎に対して抑制的に働く細胞群が存在している可能性が示唆されており、この抑制細胞群を同定するために、移入する細胞群を細分化したうえでの移入実験を行うとともに、抑制機構を明らかにするための機能的解析を開始しており、今後も継続して解析を行う予定である。 RA患者末梢血における解析は、Th-17細胞とRAの発症および活動性との関連が示唆される結果が得られ始めており、今後は症例を蓄積することでデータの信頼性を確保するとともに、治療の有無および介入前後での評価を行う予定である。また関節炎の炎症局所におけるT細胞subsetの詳細を明らかにするために関節手術時などに摘出される炎症性滑膜からCD4+ T細胞を分離し、末梢血と同様の解析を行うことを検討している。 retrovirus vectorを用いた解析においては、CD4+ T細胞への感染効率を向上させるために実験方法の見直しや、超遠心を用いたウイルスの濃縮化を予定しており、機能解析に進みたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続きRORγtトランスジェニックマウスを繁殖及び交配しており、マウスの系統維持やC57BL/6マウス自体の購入に年間30万円程度の支出が必要である。また、コラーゲン誘導関節炎には抗原であるchicken type II collagen、アジュヴァンドとして結核死菌が必要であり、年間20万円程度が必要である。 マウスおよびヒトにおける病態の解析等のためにサイトカインの細胞内染色に用いる抗体、サイトカイン検出に用いるELISAキット、T細胞分離のためのMACS関連試薬およびカラム、in vitroでの分化実験に用いる各種サイトカインなどが必要であり、支出として年間100万円程度を見込んでいる。 本研究に関しては、日本リウマチ学会、日本免疫学会、アメリカリウマチ学会での発表を予定しており、毎年の参加で20万円を見込んでいる。
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