関節リウマチ(RA)の病態の中心を担う滑膜線維芽細胞の前駆細胞を同定し、病的な滑膜組織の形成に至る過程を明らかにすることにより新たなRAの治療法開発への端緒とすることを目指し、関節炎モデルマウスを用いて以下の検討を行った。 1.病的滑膜線維芽細胞前駆細胞の細胞種の同定:組織修復や組織炎症の過程では間葉系幹細胞のみならず血球系幹細胞に由来する間葉系細胞が存在することが報告されている。そこで血球系前駆細胞と間葉系前駆細胞のそれぞれが関節炎において病的滑膜線維芽細胞の形成にどのように寄与しているのかについて明らかにするため、線維芽細胞をGFPにて標識することのできるCol1-GFPマウスより採取した骨髄細胞を野生型マウスに移植し関節炎を誘導し、関節局所に存在するGFP陽性細胞を評価した。 2.病的滑膜線維芽細胞前駆細胞の存在部位の同定:関節炎において滑膜線維芽細胞は血流を介して他の関節に移動し得ることが報告されるなど、滑膜線維芽細胞はこれまで想定されていた以上に動的な細胞種であることが想定される。そこで関節炎の形成過程において、関節外より病的滑膜線維芽細胞前駆細胞が新たに関節内に移動する可能性について検討するため、Col1-GFPマウスと野生型マウスとを併体結合し、相互の血流移動を可能とした後に関節炎を誘導し、野生型マウスの関節局所におけるGFP陽性細胞を評価した。 3.関節炎における線維細胞の解析:線維細胞は血球系由来の線維芽細胞前駆細胞として関節炎の病態に関与することが想定される一方で、マウス由来の線維細胞はその同定・培養が困難であることから、生体における働きの解析はこれまで困難であった。そこでマウス由来線維細胞の採取・培養のための実験系を検討の上確立し、関節炎の有無による線維細胞の挙動の違いを検討した。 これらの実験により病的滑膜線維芽細胞前駆細胞の細胞種とその局在を明らかにした。
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