研究課題
若手研究(B)
1.疾患iPS細胞研究の基本となる「iPS細胞から免疫担当細胞(樹状細胞やマクロファージ)を安定して分化誘導する」実験系の確立が必要である。このテーマに対して既に取り組んでいた実験系の詳細な検討を行った。当方法ではiPS細胞由来の単球から樹状細胞やマクロファージ(特に炎症性マクロファージ(M1)や制御性マクロファージ(M2))を簡便な方法で安定して誘導できるようになった。さらにこれらのiPS細胞由来の単球やマクロファージ・樹状細胞はサイトカイン産生能や抗原取込能などの機能検査でもプライマリー細胞と近似した機能を有していることを確認した。このiPS細胞/ES細胞からの単球・樹状細胞・マクロファージの分化誘導系の確立に関して英文雑誌に報告した(PLoS One. 2013;8(4):e59243.)。2.すでに樹立に成功している中條―西村症候群の患者由来のiPS細胞(NNS-iPS)のiPS細胞としての評価(テラトーマ試験や遺伝子発現解析など)を行い、今後の研究に使用可能なクローンの選別を行った。さらにそれらの候補クローン別の血球への分化能や脂肪細胞への分化能について検討を行った。iPS細胞一般的な特徴としてクローンによって分化効率が異なることが知られているが、NNS-iPSでもクローン間の分化効率の差は認められたが、正常iPS細胞と比べて分化効率や分化能に差は認められなかった。3.安定して血球へ分化するクローンを選んでNNS-iPS由来の血球のサイトカイン産生能など機能解析を始めている。
2: おおむね順調に進展している
NNS-iPS由来の血球の機能解析には取り組み始めているが、iPS細胞由来の脂肪細胞の分化系で安定して、機能的脂肪細胞の分化誘導ができておらず、今後改良が必要と考えられる。
研究計画のH24-26年の研究目標(疾患iPS細胞由来の免疫細胞や脂肪細胞の機能解析や相互作用の解析)の達成を目指して研究を推進する。安定したiPS細胞由来の脂肪細胞の分化誘導のために、文献報告のあるPPAR-γの強制発現系の作成や、中條―西村症候群の責任遺伝子であるPSMB8の遺伝子変異の修復などをすでに樹立したiPS細胞に導入し、病態解析研究のための各種iPS細胞を作成し、多方面からの病態解析を行う予定です。安定した脂肪分化系が樹立できれば、次年度中にiPS細胞由来の免疫細胞と脂肪細胞の混合培養系の樹立を目指す。脂肪分化系の樹立が困難な場合のために同時に脂肪前駆培養細胞をiPS細胞由来脂肪細胞の代わりに用いた混合培養系の樹立も検討する。
平成24年度の使用予定であった試薬などを使用する研究を平成25年度に繰り越したため繰越金が生じました。申請書の記載通り、繰越金も合わせて平成25年度以降も細胞培養用消耗品、サイトカイン、細胞染色用抗体、分子生物学的試薬などの試薬代として研究費を使用する予定です。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
PLoS One
巻: 8 ページ: e59243
10.1371/journal.pone.0059243