研究課題
昨年論文報告した(PLoS One. 2013;8(4):e59243)本研究の一環として確立したfeeder細胞を用いずに簡便にiPS細胞から単球を分化する方法を用いて、昨年度までに京都大学iPS細胞研究所で樹立した健常コントロールES/iPS細胞と中條西村症候群の患者由来iPS細胞を用いて、単球分化を行い、得られた2種類の単球のProteasome活性を測定した。中條西村症候群の患者iPS細胞由来単球では、健常コントロールに比べてキモトリプシン活性が低く、Trypsin活性やCaspase活性は健常コントロールと同程度であり、実際の患者の血球を用いた既報の通りの結果が再現された。サイトカイン産生についても検討し、中條西村症候群の患者iPS細胞由来単球は、LPS+ATP刺激により健常コントロールiPS細胞由来の単球に比べてIL-6,IL-1betaの産生が高く、IFN-γ刺激によりIP-10の産生が高いことが判明し、今後の病態解明や創薬に繋がる実験系として確立できた。また、本疾患の病態における活性酸素の関与を評価するために患者の尿中8-OHdGを測定したが健常コントロールと有意差を認めなかった。今後他の手法による酸化ストレスの評価を行う。同時に健常コントロールES/iPS細胞と中條西村症候群の患者由来iPS細胞からの安定した脂肪細胞の分化誘導法の確立に目指した条件検討を行っている。
3: やや遅れている
proteasome活性測定法の検討や、サイトカインアッセイの再現性の確保に時間を要したため、iPS細胞由来の脂肪細胞の検討を行う十分な時間が確保できなかった。
昨年度得られた知見である、サイトカイン産生が高くなることの詳細なメカニズムを探求していくことで、中條西村症候群の患者で認められる異常なサイトカイン産生を抑える創薬に繋げることを検討する。iPS細胞からの脂肪細胞の分化にはPPAR-γなどの脂肪分化のマスター遺伝子を遺伝子導入するなど効率的な脂肪分化法を近年の報告を参考に模索する。
安定した脂肪分化系が樹立ができず、予定していたiPS細胞由来の免疫細胞と脂肪細胞の混合培養系の検討ができなかった。そのために予定していた試薬代を次年度に繰り越しました。平成25年度の使用予定であった試薬などを使用する研究を平成26年度に繰り越したため繰越金が生じました。申請書の記載通り、繰越金も合わせて平成26年度も細胞培養用消耗品、サイトカイン、細胞染色用抗体、分子生物学的試薬などの試薬代として研究費を使用する予定です。
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PLoS One
巻: 8 ページ: e72551
10.1371/journal.pone.0072551. eCollection 2013