研究課題
<目的>ループス腎炎における糸球体上皮細胞(ポドサイト)の機能については不明な点がまだ多い。全身性エリテマトーデス(SLE)のT細胞ではCalcium/calmodulin-dependent protein Kinase Type IV(CaMKIV)の発現が増加しており、T細胞機能の異常を引き起こすことが報告されている。今回、我々はループス腎炎患者の腎生検組織およびヒトのポドサイトのcell line (AB8/13)を用いて、CaMKIVのループス腎炎に与える影響について検討した。<方法> 正常コントロールとループス腎炎における腎生検組織におけるNephrinおよびCaMKIV発現を蛍光染色にて検討した。また正常人およびループス腎炎患者の血清からIgGを分離し、IgGをポドサイト とともに24-48時間インキュベートして、ポドサイトに発現しているCaMKIV mRNA発現変化、microarray 解析にてCaMKIVに関連する遺伝子発現解析を行った。<結果>ループス腎炎患者の腎生検組織における蛍光染色ではポドサイトにおけるNephrin発現は低下し、逆にCaMKIV発現は上昇していた。 またCaMKIV mRNA発現は正常IgGに比してループス腎炎IgG刺激で有意に増加していた。またmicroarray解析では正常IgGに比してループス腎炎IgG刺激でCaMKIV発現が1.65349倍増強しており、Gene Ontology解析ではCaMKIVを含む細胞の活性化に関連する遺伝子群の発現が変化していた(P<0.04711)。<結論>ループス腎炎患者におけるCaMKIVを介したpodocyteの機能変化が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ループス腎炎におけるポドサイトではCalcium/calmodulin-dependent protein Kinase Type IV(CaMKIV)の発現が増加していることが、microarray解析や遺伝子発現解析にて明らかにできた。その機能変化がもたらす役割について現在解析中である。
今後はループス腎炎におけるCaMKIVの役割について、si-RNAによるgene delationやCaMKIV阻害薬を用いて特異的な細胞内シグナルの変化についてとらえたいと考えている。特異的なシグナルが解明されれば、SLEのモデルマウスを用いた系でもpodocyteに与える影響について検討したいと考えている。
消耗品の中でpodocyteの機能解析に関わる抗体、トランスフェクションキット、siRNA、CaMKIV阻害薬、PCRプライマー、血清から分離する抗体に必要なカラムへの支出、さらにマウスの腎臓組織におけるシグナル発現に必要な検出系や解析に必要な試薬の購入を検討している。旅費は、国際学会、国内学会でその成果を発表するために必要である。特に、国際学会は、1年に1回、欧州リウマチ学会、米国リウマチ学会、および米国腎臓学会のいずれかに参加する予定である。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (5件)
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