研究課題/領域番号 |
24791001
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
浜 真麻 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (70574169)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 破骨細胞分化 / HO-1 / Bach1 |
研究概要 |
これまでに我々は,Bach1欠損マウスを用いたin vitroの解析から,骨髄マクロファージから破骨細胞への分化段階の早期にHO-1の発現抑制が起こること,HO-1高発現で破骨細胞分化が抑制されること,HO-1発現抑制はBach1を介した転写抑制以外にBach1非依存性の制御もあることを明らかにした.これらの結果をもとに,平成24年度は以下の検討を行った. 1.RANKL刺激後のHO-1転写抑制におけるBach1以外の候補因子の検討:1) Bach1と相同性の高い転写因子Bach2が,B細胞においてHO-1発現調節に関わるという報告(Watanabe-Matsui M, et al. Blood 2011)があり,Bach2の関与について検討した.Bach2欠損マウス由来骨髄マクロファージでは野生型と同程度,Bach1/Bach2ダブル欠損マウス骨髄マクロファージではBach1欠損と同程度にRANKL刺激後のHO-1転写が抑制されることから,Bach2はHO-1発現に影響しないと判断した.2)p38alpha阻害剤SB203580を添加すると,RANKL刺激後のHO-1発現低下が起こらず,破骨細胞分化が濃度依存性に阻害されることから,p38alphaのリン酸化がHO-1転写抑制に関与していることを確かめた. 2.炎症性骨破壊モデルマウスの解析:1) 通常飼育環境下のBach1欠損,野生型マウスの骨形態,破骨細胞数などは,マイクロCTや組織学的検討で差異を認めなかった.2) TNFalpha投与後の頭蓋骨を組織学的に評価したところ,Bach1欠損では破骨細胞数が少なく,骨破壊が抑制された.3) 抗コラーゲン抗体により関節炎を誘導すると,Bach1欠損マウスで関節炎の程度が軽減され,関節破壊も抑制される傾向にあった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
炎症性骨破壊のマウスモデルでのin vivoでの解析はほぼ予定通り行っており,今後は関節炎誘導マウスでより詳細な解析を行う予定である.一方,破骨細胞分化段階で関わりうる種々の因子のin vitroの解析は,転写因子のDNA結合の有無を確認するクロマチン免疫沈降法の手技の確立に難渋しており,解析が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
基本的には,平成24年度に行った研究を継続する. 1. Bach1欠損と野生型マウスの抗コラーゲン抗体誘導関節炎モデルの検討;本研究で明らかにしたHO-1の破骨細胞分化への関与以外に,Bach1-HO-1系が骨髄単核細胞から単球/マクロファージへの分化に関わるとの報告が出された.また,IL-10を産生し免疫抑制性に機能するM2マクロファージに,HO-1はCD163とともに高発現すると言われている.Bach1欠損関節炎マウスでは,破骨細胞分化抑制による骨破壊の抑制とともに,マクロファージのタイプがM2優位となることによる関節炎抑制が予想される.本モデルの検討で,関節炎や骨軟骨破壊を臨床・画像・病理学的に比較するとともに,炎症性サイトカインの発現レベルや,組織学的検討でHO-1やCD163の免疫染色を行い,Bach1欠損による関節炎抑制の機序を検討する. 2.ヒト関節リウマチにおけるHO-1および関連転写因子の発現解析;膝関節置換術で得られた関節リウマチ滑膜組織のHO-1と転写因子Nrf2,Bach1の発現を免疫染色法,免疫ブロッティング法,real-time PCR法などを用いて解析する.変形性関節症の手術検体をコントロールとする. 以上の解析を通じて,関節リウマチの病態におけるHO-1,Bach1の役割を明らかにし,関節リウマチの新規治療標的となりうるか検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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