研究実績の概要 |
制御性T細胞(Treg)-ワクチン療法を、抗原未確定な自己免疫疾患に応用する新規治療法の確立を最終目標とし、様々なT細胞シグナル伝達に関連する薬剤のTregへの影響をを検討した。 ヒトリウマチ患者においては、Abatacept (CTLA4-Ig)投与前後の末梢血Tregの変化を解析した。投与後4週間の時点でCD25,Foxp3の発現が低下しresting Treg (CD45RAhigh CD25low)の割合は有意に増加した。平成26年度においては、in vitroでのPBMC培養の系にて、AbataceptによりTreg活性化が減弱し、またTreg誘導も減少することを示し、B7-CD28シグナルがTreg活性化に重要であることをヒトで示した。 マウスにおいて、mTOR阻害剤(Everolimus)をマウス(BALB/c)に投与すると末梢血Tregが増加した(4.9→6.3%)がコラーゲン抗体誘導性関節炎(CAIA)など関節炎発症時にはTregの増加は認めなかった。そこで平成26年度においては、炎症部位(関節)にEverolimusを高濃度に導入する方法を再検討し、標的指向性のリポソーム (LiposomeにSLX(シアリルルイスX)を付着し、リポソーム内にmTOR阻害剤(Everolimus)を抱合した、“SLX-Lipo(Eve)”)を片山化学のご協力のもとに作成。これによりEverolimusは関節炎局所部位に集積され最大限の効果を発揮し、炎症病態(関節炎)においてもTregの誘導が効率的に行われた。またIL2サイトカイン(IL-2 cytokine/mIL-2 antibody(JES6-1) complexes)投与ではTregは著増し(63%)した。 これらの結果から、Tregを活性化させるためEverolimusおよびIL-2サイトカインによるTreg誘導の併用を検討した。Everolimus(SLX-Lipo(Eve))投与後、IL-2/IL-2Ab complex投与により、末梢でのTreg (CD4+CD25+ Foxp3+)が著増し(正常マウスで60%以上に、関節炎モデルマウス(SKG)では80%以上にまで著増)、関節炎の発症を強力に抑制した。これらの治療により増加したTregは免疫抑制機能を持つことが確認された。
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