研究目的のため、健常人末梢血より採取したB細胞を用い、in vitroにて解析を行った。 (1)末梢血B細胞のAICDAの発現は、BCR架橋刺激およびsCD40L/sBAFF刺激、または、IL-21の各単独刺激では、わずかに誘導されるのみであった。(2)しかし、BCR、sCD40L/sBAFF、sIL-21の3者の刺激の共存により、強力に誘導された。(3)BCL-6、XBP-1の発現、IgG抗体産生もBCR、sCD40L/sBAFF、sIL-21の3者の刺激共存により、強力に誘導された。(4)誘導されたAICDA、BCL-6、XBP-1、IgG抗体産生は、Btk特異的阻害剤により、濃度依存性にIL-21単独刺激と同程度まで抑制された。(5)B細胞株BJABではsIL-21刺激後、細胞質、核内ともにSTAT1とSTAT3のリン酸化を認めるが、Btkをknock downすると、細胞質ではSTAT1、STAT3のリン酸化を認めたが、核内ではSTAT1のリン酸化が認められなかった。 ヒトB細胞は、BCRを介する抗原シグナルとCD40などの共刺激シグナルの共存により活性化される。しかし、今回の結果より、BCR/CD40/BAFFのBtkリン酸化を介したシグナルは、IL-21の効率的なシグナル伝達を誘導し、B細胞に最大限の活性化が誘導された。即ち、B細胞の分化、活性化誘導には、BCR/CD40/BAFF-Btkを介するシグナル伝達経路、及び、それによるIL-21-JAKI/3-STAT1経路の増幅回路が介在することが明らかとなった。一方、BtK阻害薬などによりこれらのシグナル伝達経路を阻害し、B細胞活性化が完全に制御できた。以上より、Btkを標的とした低分子量化台物を用いたB細胞活性化の制御を介したSLEやRAへの治療応用が示唆された。
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