研究課題
ウイルスの感染様式には、細胞間隙に放出されたウイルス粒子が標的細胞に感染するセルフリー感染系と、感染細胞と非感染細胞間の物理的接触によりウイルスが伝播する細胞間感染系に大別される。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、両感染経路で標的細胞に感染するが、細胞間感染系ではより効率よく感染拡大を引き起こすことが知られている。近年、HIV-1の細胞間感染では、セルフリー感染系と比較して、一部の抗HIV薬に低感受性を示すことが報告された。これは、1細胞あたりに感染するウイルス伝播量が、セルフリー感染系と比べて多いため、抗HIV薬の活性が十分発揮できないと推測されている。そこで本研究では、セルフリー感染系と細胞間感染系における抗HIV薬の活性を比較することで新たな治療計画の確立につなげることを目的とした。平成24年度においては、評価系の改良を行った。具体的には、蛍光タンパクをコードする遺伝子をHIV-1感染性クローンに導入することで、陽性率の増加を図った。本改良で得られたプラスミドを用いて作製した複製可能蛍光標識HIV-1を、標的細胞として用いたMT-4細胞に感染させたところ、感染48時間後に約15%の細胞でHIV-1の感染が認められた。また、感染に用いたウイルスタイターと感染細胞率の間に直線関係が認められた。同様に、細胞間感染系の評価法も改良した結果、標的細胞では遺伝子導入したプラスミド量に依存して約10から50%近くの細胞でHIV-1陽性を示した。今後は確立した評価系を用いて解析を進める。
3: やや遅れている
従来用いていた評価系では、野生型HIVを使用して、レポーター細胞でのHIV感染率をフローサイトメトリーで評価していたが、数%程度の陽性率しか得られなかった。そこで、解析に先駆けて、評価系の改良を行ったため、実際の結果が得られるのが遅れた。しかし、解析に耐えうる程度の陽性率が得られたため、今後はこの系を使用して解析を進める予定である。
今回確立した評価系を用いて、両感染経路間での抗ウイルス薬感受性差の解析を順次進める。また、共培養数時間以内に起こる、複製を介しないGagの移動についても解析を行う。
本研究課題では、フローサイトメトリー解析が主要な評価法であるため、これに係る消耗品や、細胞培養等に必要なプラスチック器具等の購入を計画している。
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