研究課題/領域番号 |
24791022
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中山 達哉 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員 (80552158)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 豚連鎖球菌 / スイリシン / 腸管感染 |
研究概要 |
患者の多くが生ブタ肉を摂食している事実から経口ルートからの感染が推測されているが、実験室レベルでそれは実証されていない。そこで、どのようにして腸管膜バリアを破壊し血中へと豚連鎖球菌が移行するのか明確にすることを目的とし研究を行った。 加えて、前研究結果から、病原性の強い本菌では病原遺伝子であるスイリシンを持っている株が多い、そこで、病原性の一つであるスイリシン遺伝子を欠損させ、腸管感染におけるスイリシンの役割も同様に調べた。 感染実験はマウス腸管ループ法を用いた。その結果、感染後3時間で上皮細胞は突破され、粘膜固有層に本菌が侵入していることが判明した。その後、腸管絨毛は崩れ落ちるように破壊されることが判明した。しかしながら、スイリシン遺伝子欠損株では上皮細胞の一部破壊、粘膜への侵入は認められるものの、その箇所は少なく、また腸管絨毛が崩れ落ちるようなことはなかった。さらに、本菌の血中移行数を定量した結果、スイリシン遺伝子欠損株では、野生株に比べ、血中移行が著しく阻害されることが判明した。さらに組み換えスイリシン蛋白とFITCデキストラン(FD)を混ぜ、同様に感染させた結果、スイリシン濃度依存的にFDは血中から検出された。さらにスイリシンの機能がない組み換えスイリシン蛋白を作製し、同様に血中移行実験を行った結果、スイリシン不活化組み換え蛋白では血中からのFD検出量は極めて低濃度であることが判明した。加えて、抗スイリシン抗体を作製し、本菌と混ぜ、感染させて血中移行を見た結果、抗スイリシン抗体を加えた本菌では血中移行を著しく阻害させることが判明した。これらの結果から、本菌感染によって、腸管上皮細胞の破壊から、粘膜固有層への侵入、絨毛の破壊、それに伴って、血中移行が引き起こされると考えられる。また、スイリシン蛋白が本菌の血中移行に強く関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は動物実験から行い、マウスループ法を用いた感染実験は、ほぼ予定通り、終了することができた。現在、平行してトランスウェルシステムを用いたin vitro系の実験を進めているが、感染細胞生物学研究グループとの共同研究で助言も頂いているために、当初予定通り、研究は順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、腸管上皮細胞を使用しトランスウェルシステムを使った、in vitroにおける本菌による感染実験を行っている。本菌感染後、細胞層の通過をどのように行うのか、電位変化、本菌の通過数の定量及び共焦点顕微鏡による観察により明らかとする。また、本菌通過時に細胞間隙蛋白質の変化を定量し、どのように関わりがあるのか、明確にする。また、病原因子であるスイリシン遺伝子欠損株、組み換えスイリシン、不活化組み換えスイリシンを用い、スイリシン遺伝子が本菌の腸管上皮細胞通過にどのように関わっているのか、メカニズムを明らかにする予定である。 動物実験として、本菌感染時におけるTh17細胞の発現解析を行う。定量的RT-PCRによるIL17の発現解析、またセグメント細菌への影響を調べる。さらに、Th17欠損マウスを用い、本菌感染後、血中より菌数の定量を行い、本菌の血中移行に変化があるかどうか検討を行う。さらに、本菌発光株を用い、感染後、本菌のマウス内での挙動をin vivoイメージングを用いて明らかとする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行し、また、当初予定していた学会への参加も都合上、不参加としたために、当初の見込み額と執行額は異なった。しかしながら、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく予定である。
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