研究課題/領域番号 |
24791022
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中山 達哉 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 特任助教 (80552158)
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キーワード | 豚連鎖球菌 / スイリシン / 腸管感染 |
研究概要 |
昨年度の研究では、豚連鎖球菌及びスイリシン単独でも腸管上皮破壊を引き起こし、血中への移行を促進させることを明らかとした。そこで、本年度では、スイリシンのコレステロール結合部位である、トレニンとロイシンをポイントミューテーションにより両方ともグリシンに置換し、不活化スイリシンの作製を行い、不活化スイリシンによる腸管上皮細胞への影響を検証した。さらに、スイリシンと同様の種類の毒素であるストレプトリジンOを用いて、スイリシンと同様に腸管上皮破壊を引き起こすのか、A群連鎖球菌及び組換えストレプトリジンOを用いて検証を行った。 感染実験はマウス腸管ループ法を用いた。その結果、スイリシン10ug/mlで腸管上皮細胞は破壊されるのに対して、不活化スイリシンでは10及び100ug/mlの濃度でも腸管上皮細胞を破壊することはなかった。さらに血中への移行度合を示す、FITCデキストランの量も変化はなく、不活化スイリシンは腸管上皮細胞に影響を示さないことが判明した。さらに、A群連鎖球菌を腸管内に入れると、本菌同様に血中移行を引き起こすことが判明し、またA群連鎖球菌が産生するストレプトリジンOを腸管に投与するとスイリシンと同様にFITCデキストランが血中から検出されることから、スイリシンやストレプトリジンOの毒素であるコレステロール依存性細胞溶解毒素は腸管上皮細胞を破壊し、血中移行を促進させるものであることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年10月に新しい部局に移り、セットアップ等で研究が一時中断したために、当初予定よりも遅れることになった。また、昨年度予定していたトランスウェルの実験は細胞の調子等の条件設定が上手く整わず、そのかわりに不活化スイリシンの研究を進めることができ、当初の予定にはなかったが、深い研究ができていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、腸管上皮細胞を使用しトランスウェルシステムを用いた感染実験を行っている。感染後の菌のバリア破壊への進展状況を共焦点顕微鏡を用いて明らかにすると同様に、細胞側の変化を明らかにしていく予定である。特に、シグナリングに焦点を当て、バリア破壊との関わりを明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年10月に新しい部局に移動したために、研究が一時中断した。また、移動後、研究を行う準備のために、時間がある程度必要だったために、当初の計画通りに研究を遂行するすることができなくなった。 本年度ではトランスウェルを用いたin vitro系の実験の消耗費(細胞培養、分子生物学的実験、免疫組織化学的解析)及び研究を遂行するための一部書籍に研究費を充てる予定である。
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